ウィーン・トゥー・フィニッシュからツーサイト農場へ
養豚農場の規模拡大と生産性の向上について:ウィーン・トゥー・フィニッシュからツーサイト農場へ

2022.10

 生産性の向上や資産形成を図るうえで、農場の規模拡大は重要な課題です。今回は、岩手県野田村を中心に養豚振興に取り組んできた株式会社のだファームの取り組みから、地域の特色ある畜産振興を紹介します。

規模拡大への取り組み

 畜産クラスターを利用し、2021年に従来のウィーン・トゥー・フィニッシュ※1からツーサイト農場※2へと切り替えました。既存施設(現:第一繁殖農場)を改修し、母豚500頭から1000頭まで規模を拡大。これは、組合生産者の離農による規模縮小を補うための施策でもありました(図1)。

 最初に取り組んだのは、第一肥育農場の建設です。既存母豚を減らさずツーサイト農場に改修するため、新規農場の建設から着手しました。飼育中の肥育豚を新しい第一肥育農場へ移動させ、今まで使用していた肥育舎は離乳子豚舎として活用。子豚舎は、分娩・妊娠豚舎として改築し、第一繁殖農場として運用を開始しました。

 また、2020年より約9カ月かけて、産次構成や3年後の更新ピークも考慮しながら母豚を導入し、第一繁殖農場では母豚を約820頭飼育しています。

※1 ウィーン・トゥー・フィニッシュ:離乳から出荷まで同じ豚舎で肥育する飼養方式
※2 ツーサイト農場:子豚の繁殖と肥育を地理的に分離した2つの農場で行う方式

規模拡大後の飼養管理について

 規模拡大後、母豚のロット管理が課題となりました。ロットを徐々に大きくするため、今までの母豚のロットを意図的に崩し、古い豚の更新・導入豚の数を調整して一定の入舎頭数になるようなロットづくりを行い、各ロットの平準化を目指しました。

 当初は、初産が一気に増えることによる成績の低下が懸念されたものの、繊維質高めの飼料を給餌し、丈夫な腹づくりをしていたため食い込みの悪化を防ぎ、初産でも成績の低下を防ぐことができました。また、人工授精(AI)時に使い捨て手袋を使用。本交の場合、1頭ごとに手袋を交換し、陰部を広範囲に丁寧に洗うなど衛生レベルを向上させたことで、種付け成績をさらに向上させることにつなげました。これにより年間離乳頭数も28.73頭/5カ月前母豚数(図3)を記録。東北エリアにおけるPICS集計農場(ハイコープ豚)24農場中1位を獲得しました。

AI陰部洗浄(ロンテクト)により衛生レベルを向上

オートソーターの活用

 オートソーティングシステムは、肥育豚の体重を自動計量して出荷できる豚を自動的に選別する設備です。肥育エリア・給餌エリア・出荷エリアに分けられており、餌を食べたい豚はオートソーターを通り、給餌、あるいは出荷エリアに分けられます。この設備の導入によって、出荷にかかる業務の省力化が期待できます。

 現在、第一肥育農場には農場長含め3名の従業員が配置されています。収益に直結する体重測定はオートソーティングシステムを利用し、作業の効率化を図っています。出荷したい体重や頭数の設定を行うだけで、適正体重の豚が肥育エリアから出荷エリアへと誘導されます。基準を満たさず、はじかれた豚は、給餌エリアを経由して再度肥育エリアに戻されます。給餌エリアに豚がとどまるのを防ぐため、水飲み場は給餌エリアに置かず、肥育エリアのみにする工夫がされています。

 また、出荷が進んで豚房内の豚が少なくなってきた時は、半分の面積で飼育できるように豚房を分けることが可能となっているため、オールアウト前でも洗浄作業に取りかかれるつくりになっています。

 体重測定や選畜に人手を割かなくてよくなることで、少人数での運営を可能にし、第一肥育農場だけでも年間約1万頭、のだファーム全体で同2万6千頭の出荷を実現しています。

出荷(手前)・給餌(左奥)・肥育(右奥)に分けられたエリア
豚房を半分に仕切る壁

JAグループとの関わり

 JAグループは株式会社化にともなう課題解決や新技術導入支援など、きめ細かいサポートを行い、農場立ち上げ時の生産体制構築に協力し、以降も良好な関係は続いています。

 JA全農北日本くみあい飼料株式会社では海藻粉末を配合した仕上げ段階の専用飼料をつくり、一般の豚との差別化を図っており、これを食べた豚は野田村特産のブランドポーク「南部福来豚」として、JA全農いわてや株式会社いわちくと協力し販売しています。

 小規模な養豚農家が減少していく現在、株式会社のだファームのような大規模農場の存在感は一層増してきています。今後も株式会社のだファームのますますの活躍を期待しています。

野田村産ブランドポークを周知するためのブランド戦略

株式会社のだファームのあゆみ

畜産クラスター事業を活用して新設した第一肥育農場
株式会社のだファーム
平谷東英代表取締役

 前身の農事組合法人野田協業養豚組合設立(1974年)から数え、今年で48年を迎える養豚生産法人です。経営の安定化や意思決定のスピード化などを図るため、2018年に株式会社化しました。

 現在は第一繁殖農場、第二農場(一貫)、第三繁殖農場、第一肥育農場、第三~六肥育農場の8農場を運営しています(図2)。

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