選畜労力低減し、出荷成績を向上/肥育豚体重測定器 Hapimo P-Scale ハイコープver.
2024.01
出荷候補豚を選畜する際の労力の大幅な低減と出荷成績向上が期待できる、肥育豚体重推定器「Hapimo P-Scale ハイコープver.」を全農飼料畜産中央研究所(以下、全農中研)が蓄積した全農ハイコープ豚のデータをもとに、(株)ノア、(株)ポータスとともに開発しました。今回は、P-Scale ハイコープver.を導入し、出荷成績を向上させた農場での取り組みを紹介します。
1人で出荷豚を選畜可能
撮影だけで体重推定 誤差率は約3%
P-Scale ハイコープver.は肥育豚を真横から撮影することによって出荷候補豚の体重を推定することができる機器です。センサーから豚の体表(横腹)までの必要な距離は約1.0~1.6m。シャッタースピードは1/30秒以下のため、豚が自由に動ける豚房内での撮影も可能です。さらに撮影してから結果が表示されるまでの時間が約4秒と高速のため、本機器の活用により豚を体重計にのせる手間を省き、誰でも1人で出荷豚の選畜ができます。また、出荷枝肉の均一化、上物率の向上も期待できます。
全農中研で、実際の全農ハイコープ豚の肥育豚の撮影画像と体重実測値のデータを蓄積、専用の推定式を作成することで、撮影時の体重推定誤差率を約3%に抑えることができました。また、この推定式は全農中研で計測したデータをもとに作成された推定式を、付属品のUSBを用いて、所定の操作をすることによって、定期的にアップデートしていきます。アップデートすることで、より正確に推定できるように設計されています。
製品概要
Hapimo P-Scale ハイコープver.
製造元:株式会社ノア
販売元:全農畜産サービス株式会社
サイズ:190mm×60mm×130mm
※持ち手部分を除く
重量:900g
バッテリー:充電式
肥育豚体重推定器 Hapimo P-Scale ハイコープver.
事例紹介
今回、九州地方の農場でP-Scale ハイコープver.を活用して、省力化と出荷成績の向上を実現した取り組みをご紹介します。
選畜時の悩み
本農場では出荷候補を選畜するため、候補豚を通路に出して、全頭体測を実施していました。しかし、全頭体測には3人の人手と労力が必要となります。また、豚衡機を各肉豚舎で共有しており、疾病の水平感染要因と考えられたことから、全頭体測を中止することにしました。
代わりの選畜方法として実施したのは目勘です。各肉豚舎の出荷適正体重であろう肉豚を体測して、目安とした肉豚より大きな肉豚を選畜する方法で候補豚を選畜するようになりました。しかし、選畜途中で目勘が利かなくなったり、担当者によるばらつきが大きくなったりするなど、出荷成績が低迷してしまいました。
P-Scaleで簡単、正確に
2022年10月よりP-Scaleハイコープver.の使用を開始したところ、使用前と使用後で平均枝肉重量が約1.8kg(図1)、上物率が約9%改善しました(図2)。
本機器の本体重量は900gと非常に軽く、ガンタイプなので片手での撮影が可能です。そのため、片手にP-Scale、もう片方の手にマーキングスプレーを持ち、推定後速やかにマーキングすることができます。
肉豚は、105kg~120kgの推定重量別に、各重量5kg幅で色分けしてマーキングします。この農場では、これまで3人がかりで体測・選畜を行っていましたが、1人で選畜することが可能となり、作業時間も短縮することができました。
P-Scaleハイコープver.の活用効果
- 通路洗浄・豚衡機の洗浄等の手間が減った
- 出荷重量が揃うようになった
- 目勘と比べて担当者によるばらつきが減った
- 作業時間の短縮ができた
P-Scaleハイコープver.の活用により、上記のような効果が認めらました。本機器は、肉豚舎の豚房構造や飼育密度によって撮影が難しいなどの課題点もありますが、上手く使いこなすことができれば、省力化や出荷成績の向上が期待できます。現行の選畜方法にお悩みがある方はぜひ前向きにご検討してみてはいかがでしょうか。
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