生産性向上のための技術紹介
「くみあい養鶏生産性向上ヒント集」リニューアルしました!
2024.07
全農では「生産性の向上」をテーマとした「くみあい養鶏生産性向上ヒント集」を2009年に発行し、これまで多くの生産者の皆さまにご利用いただきました。一方で、養鶏を取り巻く情勢は、高病原性鳥インフルエンザの蔓延や飼料価格高騰など変化しており、現場で必要な情報や技術も大きく変わってきております。この度15年ぶりに生産性向上ヒント集をリニューアルいたしました。今回は、その中から「卵重コントロール」と「破卵の低減」をピックアップしてご紹介いたします。
養鶏研究室
卵重コントロール
多くの生産者において、鶏卵はできる限り高価格帯のサイズを効率的に生産したいものです。また、過大卵は卵殻のひび割れを増加させる要因となり、せっかく生産できた鶏卵の製品化率を下げてしまうこともあるため、極力発生を抑えたいものです。
飼料の粗たんぱく質(CP)水準調整
卵重コントロールの基本は飼料のCP水準を調整することで、産卵初期には高CP飼料で早く卵重を大きくし、産卵期後半は卵重増加が緩やかになるように飼料中のCPを落としていきます。この時、日齢ではなく卵重を基準に飼料を切り替えていくのがポイントです(図1)。
酵素製剤を活用
鶏は、飼料に含まれる穀類の細胞壁を分解する酵素活性を十分にもっていないため、飼料用酵素製剤を添加給与することで、飼料中の未利用栄養素を利用できるようになります。当所の調査では、日齢の進んだ産卵鶏に対してCP水準と代謝エネルギー(ME)水準を同時に引き下げた飼料にさまざまな酵素製剤を添加して給与したところ、飼料成分を引き下げても酵素製剤を添加給与することにより産卵率は維持されました(図2)。一方、卵重については酵素製剤を添加給与しても低く抑えられたままでした(図3)。
破卵の低減
破卵を減らす必要性
破卵率を低減できれば収益は改善します。例えば2022年度の平均卵価(Mサイズ卵215円/kg、破卵は特殊安値96円/kg)を基に試算してみると、成鶏10万羽飼養農場で1%破卵率が下がれば、差額で年間約278万円の収益改善となります。
卵殻質の強化
卵殻厚が300μmを下回ると、ケージ前破卵率は急増します(図4)。対応策として、卵殻質を低下させないことが重要であり、そのためのポイントは次のとおりです。
- 栄養バランスの整った飼料を給与すること➡卵殻の元となるカルシウムも過剰添加すると逆効果(図5)。
- 衛生管理に努め、鶏を健康的に飼育すること➡疾病は卵殻質を低下させるリスクになる。
- 期別給与などで過大卵の発生を抑えること➡卵殻量はおおむね一定のため卵が大きくなると卵殻が薄くなり、破卵が増加する(図6)。
農場内の破卵発生箇所を見つけて改善
図7のような破卵発生状況である場合、エレベータに乗り移るタイミングやエレベータからバーコンベアに乗り移るタイミングで、何らかの不具合が起きていることが想定できます。例えばバーコンベア乗り移りの勢いが原因であれば、当該箇所への緩衝材設置が有効です。
衝撃センサー(ロボエッグ®)を用いた調査
※ロボエッグ®は株式会社TOMTENの登録商標です。
JAグループでは、卵にかかる衝撃度をリアルタイムで測定する卵型無線センサー(ロボエッグ®)を用いて、農場またはGPセンターでの格外卵発生原因の調査を実施しています。実際に、ライン上で卵にかかっている衝撃度をリアルタイムで確認することができるため、原因を明らかにすることが可能です。
衝撃センサーを利用した破卵調査についてはこちらからご覧いただけます。
最後に
リニューアルした「くみあい養鶏生産性向上ヒント集」は、今回ご紹介した内容以外にも、皆さまの農場経営に役立つヒントをさまざまな視点から解説しています。経験の浅い方からベテランの方まで活用できる1冊です。ご興味のある方は、お近くのくみあい飼料・農協の担当者まで気軽にお問い合わせください。
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