NEWS PICSを活用して課題の把握に努め、今後の経営方針を検討する

2024.07

損益分岐点を活用した経営改善

 Web PICS(以下、PICS)は、過去の経営データから損益分岐点が求められるだけでなく、売上高や販売量の増加がどのように利益に結びつくか、目標利益達成に必要な経営規模がどのくらいか、販売単価の変動が損益分岐点にどのように影響を与えるかといった、さまざまな分析をすることができます。

PICSによる経営分析でもうかる養豚経営

 PICSを経営分析に活用しましょう。養豚経営も一般の経営と同じように、売り上げから費用を差し引いたものが利益になります。そして、費用には固定費と変動費があります。固定費は、人件費や水道光熱費、通信費などが該当し、基本的に売り上げに比例せずにかかる費用です。また、変動費は、飼料費など売り上げに比例して変動する費用です(図1、図2)。

 売り上げが費用を大きく上回った場合は、大きな利益が出ている状況です。また、売り上げが費用を下回った場合は、利益が出ていない状況です。売り上げと費用の差が「0」となるところを、損益分岐点売上高といいます。ご自身の養豚経営の損益分岐点売上高を把握し、PICSを使って農場管理の課題を分析することで、もうかる養豚経営を心がけるようにしましょう。

 図3は、売り上げに対する固定費と変動費の考え方を示したものです。固定費が上がっても変動費が上がっても利益が出にくくなることがわかります。このようにご自分の農場経営において、損益分岐点売上高を把握し、固定費がかかっているのか、変動費によって経営が圧迫されているのか、PICSを活用しながら課題の把握に努めましょう。

経営安定のポイント

 次に、経営安定(改善)させるポイントの例を見てみましょう。

売り上げを上げたい

  1. 出荷頭数(離乳頭数)の増加
  2. 出荷体重の増加
  3. 上物率の向上

費用を下げたい

  1. 飼料効率の改善➡飼育環境の改善
  2. 事故率の低減
  3. 従業員1人当たりの飼養頭数の増加

目標利益達成のための分析

 上記ポイントの「売り上げを上げたい」のうち「1.出荷頭数(離乳頭数)の増加」につながるPICSの活用事例をご紹介します。PICSデータで出荷頭数の増加につなげようとする際、下記3点の出力データを活用します。

1.「未処置母豚一覧」

 通常の繁殖サイクル日数を外れた母豚を早期発見し、繁殖の回転を高め、生産頭数の増加を図ります。

2.「作業予定表」

 母豚の繁殖作業の予定表を作成し、作業漏れを防ぎ、1と併せて活用します。母豚得点、とう汰候補豚抽出更新のための母豚ごとの簡単な成績レベルを抽出し、母豚の個体別成績をCSV出力し、自由に成績分析を行い、更新候補豚を見つけ出します。

3.「過去12カ月の成績」と「3年成績比較」

 繁殖部門、肥育部門の過去1年間と過去3年間の月別の成績を比較して、直近の状況を把握します。

まとめ

母豚の繁殖サイクルを早めよう

 これらの出力データを使って、種付けされずにいる母豚がいないか、いる場合は適切な繁殖作業を実施できているかを確認して母豚の適切な繁殖サイクルが達成できているか確認しましょう。このように母豚のサイクル日数を早めて、離乳頭数や出荷頭数が増えることで売り上げの増加が見込めます。

PICS集計を活用しよう

 さらに、JA全農が毎年公開しているPICS集計も活用しましょう。母豚数など近い条件の農場と比較して離乳頭数または出荷頭数が多いのか、少ないのか、比較して改善を図っていきましょう。このように、自農場の過去のデータとの比較、他の農場との比較を行い、売り上げの増加に努めましょう。目標とする項目と数値目標を設定し、それに向かって作業を行い、効果をPICSで検証して達成度を確認します。これを繰り返し実行することで、農場の成績がよくなっていくはずです。

最後に

 今回は養豚経営の基本的な考え方とPICSの活用についてお話ししました。PICSは比較的安価にお使いいただける養豚農場管理システムです。

 また、JA全農ではPICS利用者のデータの集計を行い、公開しています。皆さんの養豚経営の参考にしていただき、経営の改善につながれば幸いです。もうかる養豚経営を実践していきましょう!

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