生産性向上のための技術紹介
産歴構成の適正化で繁殖成績アップ!

2024.07

 繁殖成績に影響を及ぼす要因は、母豚のBCS(ボディ・コンディション・スコア)、種付け技術など多岐にわたりますが、農場の土台となる母豚の産歴構成を適正に保つこともポイントの一つとして重要になります。在庫母豚の現状把握や候補豚の導入計画を改めて確認し、産歴構成の適正化により産子頭数および離乳頭数のアップを目指しましょう。

養豚研究室

産歴構成の重要性

 図1は、中研養豚ファーム(全農の研究所にある養豚ファーム)における、2021年度から23年度の産歴別の平均総産子数を示したものです。一般的に1〜2産が総産子数・正常産子数ともに少なく、3〜6産が総産子数・正常産子数のピークとなります。3〜6産を在庫母豚の中で、いかに多く持つことができるかどうかが繁殖成績アップのポイントになります。

 一方、候補豚のすべてが3〜6産を迎えることはないため、現実的には3〜6産の在庫母豚を最も多くしようとすることは難しいです。図2のように1産(未経産含む)をピークに右肩下がりの産歴構成を目指すことが望ましいです。

繁殖候補豚の導入計画ポイント

●外部導入の場合は、1年間の導入月と導入頭数を年度初めに決める。
➡ロットごとにまんべんなく導入できるよう時期や月齢を調整する。

●更新率は35〜45%とする。母豚100頭規模であれば、年間35〜45頭を導入することが目安。

●ウィークリーシステムの場合は週単位で、スリーセブンシステムの場合はグループ単位で何頭候補豚の種付けをするか決めておく(月単位よりも週単位で種付け頭数を考えた方が数字を意識しやすい)。
➡特に候補豚を自家育成している場合は、月によって繰り入れ頭数にバラツキが出やすいため、週単位で候補豚の種付けを何頭するか決めておくと産歴構成を維持しやすい。

母豚の更新基準ポイント

●目安は飼養年数3年または産歴7産終了。

●廃用は離乳直後に行い、空胎日数をできる限り短くする。

●PICSなどの生産管理システムを活用し、母豚ごとに過去の繁殖成績をチェックし成績不良母豚を見逃さない。

●成績不良母豚の明確な廃用基準を設ける(図3)。

不受胎母豚への対応ポイント

●種付け後21日目に再発情がないか発情確認を行う。
➡母豚カード(図4)などに次回発情予定日(受胎確認日)を記載し、数日前から発情兆候(陰部の発赤、粘液など)が見られるか確認をすると見逃しが減る。

●超音波診断装置による妊娠鑑定は25日目以降に行う。
➡あまり早期に妊娠鑑定を行うと卵巣嚢腫と見誤る可能性がある。

●離乳後に発情が来ない原因を推測でもよいので特定する(図5)。

 特に1カ月以上発情や発情兆候が見られない場合は、卵巣静止や卵巣萎縮を起こしている可能性もあります(図6、7)。その場合は、獣医師の指示のもと適切なホルモン剤での処置を行うか、回復が見込めない場合には廃用を検討します。

図6 超音波診断装置の画像

【妊娠23日目(正常)】(山口,2007)

正常妊娠画像には子宮壁(白く厚い部分)が映るけど卵巣嚢腫の場合は映らないよ!

図6 超音波診断装置の画像

【卵巣嚢腫】(写真提供:野口)

正常妊娠画像と違い、丸の境界が不明瞭で、輪郭が滑らかな球状を描いていることが特徴。

図7 卵巣静止の実物写真

【卵巣静止】(中研)

卵巣の大きさは正常範囲にあるが、卵胞発育や黄体形成が全くないものや小卵胞の発育と閉鎖退行を繰り返すが排卵しない卵巣を指す。

参考となる記事 ちくさんクラブ21過去号から

妊娠鑑定については、2016年10月号

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