冬場を迎えるにあたって
農場におけるネズミ対策は「入れない・すみ着かせない・増やさない」が基本

2024.10

農場におけるネズミの存在は、各種病原体の伝播のみならず、生産者にさまざまな経済的損失をもたらします。鶏舎では飼料や水が常に摂取でき、鶏が就寝する消灯時間帯は、夜間に活動するネズミには生息しやすい環境となっています。特に冬場は、暖かさや食料を求め、鶏舎内にネズミが侵入する恐れがあります。そこで今回は、本格的な寒さを迎える前に、農場におけるネズミ対策について紹介します。

養鶏研究室

ネズミの種類および生態

 ネズミ類は国内では約18種が生息しており、鶏舎では主にドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミが問題となります(表1)。ネズミの被害は衛生面と経済面に分けられます。

 衛生面では、さまざまな場所を行き来するため、病原菌を媒介し、ヒトや鶏の感染症を引き起こす原因となります。鶏では、サルモネラやインフルエンザを媒介した例があります。

 経済面では、クマネズミを昼間に頻繁に見かける鶏舎では5000匹以上が生息していると考えられ、その場合、飼料の盗み食いにより年間で500万円以上の損失が発生します(表2)。

表1 ネズミの種類と生態
表2 ネズミによる盗食量とその被害額

防除の作業

 防除の作業は、2つに大きく分けられます。

1. 状況の把握

 ネズミの種類や数、生息する場所といった生息実態、農場全域の被害、鶏舎環境の調査(鶏舎内の破損箇所や侵入経路の推定)を行う。生息実態の把握には、「ラットサイン」と呼ばれる足跡、糞、かじり跡などの痕跡を確認(写真1、2)。

写真1 ラットサイン(足跡)
写真2 ラットサイン(糞)

2. 防除装置の配置計画

 防除には環境的防除、物理的防除、化学的防除の3種類がある。ネズミの種類や習性、装置の特徴を生かし、組み合わせることでより効果的な防除が可能となる。

環境的防除

鶏舎内外の整理整頓および清掃(写真3)

 巣の材料となる紙袋、布、ビニール、羽毛を放置しない。天井裏や壁の隙間(ウインドウレス鶏舎では特に注意)、資材置き場や飼料置き場の隅など、鶏舎内で死角となる場所は営巣場所となるので、点検を強化する。

写真3 鶏舎の整理整頓

飼料の管理

 ネズミは鶏の飼料を盗み食いするため、こぼれた飼料の清掃や飼料の保管場所へのネズミの侵入経路の遮断を行う必要がある。

隙間の封鎖

 ドブネズミは2~3cm、ハツカネズミは1.5~2cmの隙間があれば通り抜けることが可能。鶏舎内のシャッター、ドア周り、電気ケーブル、ガス管などの引込口、コンベアの入口や資材搬入口、換気扇などの隙間に注意が必要。

物理的防除

ネズミの通り道へのカゴや罠の設置

 粘着マット(写真4)の設置が代表的(ネズミは視力が悪く、水平面での判断が苦手)。粘着マットにはネズミを誘引する効果はない上、ジャンプして避けることもあるのでシート間の隙間を少なくし、敷き詰める方法が理想的。鶏舎のようなちりやほこりの多い環境ではすぐに粘着力が失われ、長期の効果は期待できないため定期的に交換する。

写真4 粘着マット(新品)

化学的防除

殺鼠剤・忌避剤の使用

 薬剤抵抗性がつくのを防ぐため、長期間、同じ薬剤を使用しないことがポイント。毒には、効き目が早くネズミに気づかれやすい急性毒と、効き目が遅いが気づかれにくい慢性毒がある。ネズミは用心深く、薬剤をあまり食べない傾向があるため、薬剤と飼料や砂糖、食用油などを混ぜて喫食用の毒餌(写真5)を作る。また、ヒトの匂いに警戒してしまうので、手袋を使用して作成する。

 殺鼠剤は使い方を誤れば鶏に対しても中毒を起こす危険性がある。さらに、中毒死したネズミを天敵動物が捕食することで、二次中毒を起こす可能性があるため、取り扱いおよび保管場所には十分な注意が必要。

写真5 喫食剤

最後に

 ネズミ対策の基本は鶏舎内外の整理整頓です。ネズミを「入れない・すみ着かせない・増やさない」ために、継続して取り組む必要があります。駆除業者に任せてしまうのではなく、現場のスタッフと共に意識的に対策を進めていきましょう。

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