きてみて!うちの学校/鹿児島県立鹿屋(かのや)農業高等学校

2024.10

学校の写真

創立129年の歴史と伝統を誇る鹿児島県立鹿屋農業高等学校。
畜産科では肉用牛、酪農、養豚、養鶏と畜産主要部門を全て学べる。
そして、専攻学習により、畜産業を支えるスペシャリストを育成する。
部活動として「鹿児島黒牛研究部」で和牛について学びをさらに深め、
同部は2023年度の第7回和牛甲子園で総合評価部門「最優秀賞」に輝いた。
和牛の飼養に汗を流す“高校牛児”の取り組みを紹介する。

地図
「暑い中、作業お疲れさまです」
増永泰久校長
  • 校名
    鹿児島県立鹿屋農業高等学校
  • 所在地
    鹿児島県鹿屋市寿2丁目17番5号
  • 生徒数
    427名(2024年4月時点)
  • 創立
    明治28(1895)年5月1日
  • 学科
    畜産科、農業科、園芸科、農業機械科、
    農林環境科、食と生活
  • 特徴
    文部科学省から農業経営者育成高等学校の指定を受け、農業のスペシャリスト育成を目指す。農業科、園芸科、畜産科の生徒は1年次に「責善寮」に入寮し、農業者としての資質を養成する。遠隔地出身者向けの寄宿舎もある。

和牛一貫経営を学べる環境 県内外から生徒集う

 鹿屋農業高等学校は畜産、農業、園芸、農業機械、農林環境、食と生活の6学科をそろえる。和牛経営など農業の盛んな肝属(きもつき)地域に校舎を構える同校には、離島も含む県内外から専門的な農業を学ぶために意欲ある生徒が集う。

 畜産科は3年生33人、2年生20人、1年生15人が所属し、和牛91頭、交雑種2頭を飼養。後輩への知識と技術の継承を図るため、3学年での合同実習に力を入れる。

 同科の特徴の一つに、和牛の生産から育成、肥育までの一貫経営を学べる環境がある。実習を通して、子牛や肥育牛の出荷なども経験する。近年は受精卵での牛の生産も始めた。畜産科の篠原道明先生は「一貫体制を通して、生徒自身で育てた牛が、どんな肉になるのかを学べる。3年間の限られた期間ですが、次の学年や世代に牛をつなぐ経験も重要な学習です」と話す。

 牛の管理は専攻班の当番活動と、部活動の「鹿児島黒牛研究部」で実施する。部は現在、3年生6人、2年生1人、1年生3人で活動しており、生徒は自主的に昼休みや休日にも集まり、子牛の哺乳や給餌、草入れなどの管理を欠かさない。増永泰久校長は「夏休みも暑い中、世話をしている生徒を見ていると、本当に牛に愛情をもって接していることが分かります」と話す。

第7回和牛甲子園で最優秀賞

枝肉評価部門で他を圧倒 丁寧な管理が実を結ぶ

 24年1月の第7回和牛甲子園で、鹿児島黒牛研究部は取組評価と枝肉評価を合わせた総合評価部門で悲願の最優秀賞に輝いた。取組評価部門では、飼料価格高騰を受けて、地域の未利用資源である竹の活用に加え、受精卵移植活用の取り組みなどが評価され審査員特別賞に選ばれた。枝肉評価部門では最優秀賞を獲得。篠原先生は「生徒が牛を毎日見ることで日々の変化を見逃さなかった。牛自らが生徒に寄ってくるほどの関係性をつくっている。丁寧な管理が結果に結びついた」と振り返る。

 同部は第8回和牛甲子園での連覇や今後の共励会での受賞を見据え、生徒は夏休みも牛の世話をするために学校に通う。生徒の一人は「前回大会で他校の飼養環境などが刺激になった。次は前回の自分たちを超えることを目標に取り組みます」と意気込む。

 一方で篠原先生は「大会の結果が全てではなく、まずは牛の命を大切に扱って出荷するまでをやりきることが大切。その上で楽しんで仕事ができるような人に育っていってほしい」と指導する。

生徒の写真
「命を扱う自覚を持って、
楽しんで仕事のできる人になろう」
畜産科 学科主任 篠原道明先生

地域資源の「竹」活用を研究

 竹林面積全国1位の鹿児島県の資源活用を目的に、地元企業と連携して竹の活用を進めている。豚肉で肉質向上効果が確認されている、サイレージ化した竹の肥育牛への給与を試験中。脂肪の質に影響するとされるオレイン酸の含有量アップが期待できる。敷料に竹を追加し、消臭効果も検証するなど、無駄のない地域資源活用を目指している。

竹を活用した飼料
牛の食い込みも良いという

左から

門原 真央(かどはら まお)さん

牛には手を掛けただけ、
結果で返ってくるのが面白い

長嶺 葉月(ながみね はづき)さん

かわいい牛と会えるから、
毎日の世話もやりがいがある!

生徒の写真

地元農家や企業からの応援

広がる地域との連携 先輩の思いをつなぐ

 過去の和牛甲子園で好成績を残してきたこともあり、同校には地域から注目が集まる。第7回和牛甲子園に出品し、校訓の一つを冠した「誠実号」は地域の血統を利用した受精卵移植で誕生した。地元農家の勧めで4年前から計画し、学校で生まれた牛が好成績だったことで、大会後は地元からの反響が大きかったという。

 同校の卒業生には、肝属地域の和牛農家が多く、農家からアドバイスを直接受ける機会もある。牛の選抜や給餌についての助言の他、超音波を使った肉質の検査を卒業生の農家から学んだ。篠原先生は「地元農家や先輩がつないできた和牛を大切に飼い、守っていく意識が育っています」と語る。

 和牛の生産、加工から販売までを行う地元企業との連携も実施。農業高校向けの枝肉共励会への参加や、バイヤーを招いた勉強会、枝肉の断面を生徒が確認する活動も行ってきた。増永校長は「生徒の努力に、今後いろいろな良い結果がついてくると思う。これからが楽しみ」と笑顔で話した。

生徒の写真
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和牛甲子園の副賞授与式

 取材当日、第7回和牛甲子園の副賞授与式が開かれた。全農畜産サービス株式会社の田野倉忠之専務が、牛の様子が遠隔で確認できる養牛カメラのCAME1000(カメセン)を学生に授与。田野倉専務は「引き続き、畜産への取り組みに力を入れてほしい」と激励した。3年生の森元陽哉さんは「次の大会に向け、自信のある品質に仕上げているところ。枝肉で満点を取り、完全優勝したい」と力を込めた。

副賞を手渡す田野倉専務(左)
「養牛カメラ」を生かし、
次回大会で完全優勝を目指す

左から

森元 陽哉(もりもと はるや)さん

実家も農家で、寝ても覚めても
牛との生活が楽しい

浦﨑 聖斗(うらさき まさと)さん

毎日学校で、部員と牛と
顔を合わせるのが喜び

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