ET研便り
2023年度版  全農ET研究所の受精卵の移植成績を徹底解剖

2024.10

全農ET研究所は本場と3分場からなり、各拠点で日々、採卵および受精卵移植の業務を行っています。今号では、2023年度における受精卵の移植成績について紹介します。

全移植成績(表1)

 2023年度の1年間で、8,176頭に移植を実施し、受胎率は56.4%でした。ここから先は、色々と場合分けをしながら、ひも解いていきます。

品種および産歴別の移植成績(表2)

 移植する牛は、ホルスタイン種や交雑種から、ジャージー種やブラウンスイス種、はたまた闘牛まで多岐に渡ります。

 最も移植頭数が多かったのはホルスタイン種で6,671頭に実施し、受胎率は未経産牛が62.5%、経産牛が49.7%でした。黒毛和種の移植頭数は768頭で、受胎率は未経産牛が56.2%、経産牛が51.9%。交雑種は683頭で、受胎率は未経産牛が68.3%、経産牛が61.1%でした。

 一般的に、未経産牛に比較して経産牛では受胎率が低下します。各畜種の経産牛に対する移植傾向については、ホルスタイン種では種付行為を複数回しても受胎しないリピートブリーダーも多く、移植対象となっています。また、昨年の猛暑や飼料代高騰など、経産牛の繁殖環境が悪化する中、良好な受胎率だったと考えます。

 黒毛和種では、繁殖成績の良い高齢牛への移植が中心で、主に血統更新に活用されています。このことから、未経産牛に比べ経産牛でも大きな受胎率低下は認められませんでした。

 交雑種は例年、受胎率が高位安定しており、繁殖性の良さがうかがえます。なお、経産牛は2卵移植が一定数を占めるため、受胎率の引き上げに影響を与えたと考えられます。

受精卵種類別の移植成績(表3)

 ET研究所では、体内新鮮卵の特徴である「高受胎性」を生かすため、採卵に合わせて移植を実施し、新鮮卵を最大限に活用しています(シンクロET)。23年度は、凍結卵の移植頭数が2,359頭で受胎率48.9%に対し、新鮮卵が5,037頭で59.9%と、受胎率向上に寄与しました。日本家畜人工授精師協会が発刊する機関誌24年7月号によると、体内受精卵の受胎率は51.1%※で、ET研究所の新鮮卵利用による効果が表れています。

※公表資料では新鮮/凍結の区分なし

月別の移植成績

 年々暑さが増し、北海道でも40度近くまで気温が上昇することもあり、もはや日本国内では暑熱ストレスを避けられない環境になりました。特に、ホルスタイン種経産牛への人工授精の受胎率は大きく低下しています。

ポイント 新鮮卵の受胎率55~64%と好成績

 暑熱ストレスは受精卵の卵割を阻害することが知られており、人工授精の受胎率を低下させる大きな要因となっています。しかし、受精卵移植の場合は、発育した受精卵を子宮内に移植するため、暑熱ストレスによるダメージを避けることが可能となります。その結果、特に新鮮卵移植では、時期を選ばず55%~64%の受胎率で推移しました(表4)。

まとめ

 こういった点からも、受胎に困っている牛には、特に暑熱下では受精卵移植(特に新鮮卵)を活用してみてはいかがでしょうか。ET研究所では、1年を通じて各地で採卵していますので、新鮮卵の利用を検討される方は、気軽に問い合わせください。

写真 シンクロETの様子

連絡先

 受精卵の血統や価格についての詳細は、こちらに問い合わせください。

電話 01564-2-5811
FAX 01564-2-5813
メール zz_zk_etc_kamishihoro@zennoh.or.jp

案内

 ET研究所は、体外受精に用いる培地や凍結液の改良、受精卵のゲノミック評価卵子のガラス化保存法など、さまざまな技術開発にも取り組んでいます。こちらの取り組みにつきましても、今後生産者の皆様に紹介していきたいと思います。

全農ET研究所の紹介動画

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