高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)に備える
2025.01
鶏舎への野生動物侵入防止の取り組み冊子化
HPAIは2020年以降5シーズン連続発生し、今シーズンは12月10日時点で既に13事例の養鶏場での発生が報告されています。
01 養鶏場・鶏舎へのウイルス侵入経路と対策
シーズン中は鶏舎周囲までHPAIウイルスが近づいていることから、鶏舎に出入りする動物や人を介した持ち込みの確率が高くなっています(図1)。
農水省からはHPAIウイルス侵入防止対策を10月から翌年5月まで強化すること、飼養衛生管理基準の順守徹底、野鳥・野生動物の侵入防止・誘引防止が指示されています。
02 野鳥・野生動物対策の再認識
野鳥・野生動物対策として、鶏舎開口部を中心にネットや金網等の設置を行っていますが、劣化・破損箇所はないか、修理は適宜済ませているか、新たな侵入経路はないか都度確認しないといけません。日常の管理の中でどのような方法で点検すべきかが課題となっています。
03 「鶏舎への野生動物侵入防止の取り組み」を冊子化
JA全農家畜衛生研究所は、JA全農くみあい飼料(株)の養鶏担当者と連携し、全国の採卵養鶏場に協力いただき、①目視による昼間の調査、②センサーカメラによる夜間の調査を検討しました。
目視調査では、主に鶏舎内外の開口部(入・排気口含む)でのネット・金網の破損、鶏舎周囲への野生動物痕跡等を調査し、鶏舎壁面、入気口金網、鶏舎排水口周囲等での軽微な破損、鶏舎周囲での野生動物痕跡等を確認しました。
夜間調査では目視調査の結果を参考に、侵入リスク箇所と想定される場所にカメラを設置し、鶏舎周囲で猫を含む野生動物の行動を確認しました。
このように農場に第三者の視点を加えることで、日常管理では気付きにくい侵入リスク箇所の早期発見が可能となり、夜間の野生動物の行動を可視化することで夜間における鶏舎開口部閉鎖の重要性を再認識できました。
これらの調査から得られた知見を、冊子「鶏舎への野生動物侵入防止の取り組み~調査・対応事例のご紹介~」にまとめました。
04 冊子活用法
野鳥・野生動物によるネット・金網・鶏舎等の破損はいつ発生するか分かりませんので点検は定期的に実施します。本冊子を活用しながら、農場自ら、第三者の視点を加えた点検等複数回実施することで、普段は気が付かない箇所の不具合の早期発見・対応が可能となります。
農場に第三者の視点を加えた点検は、補改修場所への対応を考慮し6~9月に実施します。さらに、センサーカメラによる夜間の野生動物の行動を把握することで、昼間だけではなく、夜の状況もイメージしやすくなり、鶏舎への野生動物侵入リスク低減が図れます。
冊子
鶏舎への野生動物侵入防止の取り組み~調査・対応事例のご紹介~
駆除(捕獲・処分)ではなく追い払いでカラスを防除
音撃カラススナイパー セミナーレポート
2024年10月16日
(東京都中央区)
Intel×V-net AAEON
エッジテクノロジーセミナー&デモ展示
「エッジ AI とロボティクスによるデジタル・トランスフォーメーションの最新情報」
IntelとV-net AAEONはエッジテクノロジーセミナーと題し、2024年10月16日に東京日本橋のコングレススクエア日本橋にて最新のエッジ・テクノロジーに関するセミナーを開催しました。
セミナーでは、人工知能(AI)を駆動させる最先端のエッジデバイスや関連するソリューションの紹介、実用事例として商用警備ロボットなどとともに、JA全農が開発した「音撃カラススナイパー」が紹介されました(図2)。
音撃カラススナイパーを開発したJA全農畜産生産部推進・商品開発課の嶋亮一により、農業分野におけるカラス被害の概要や畜産分野における鳥インフルエンザウイルスの脅威、そしてカラス対策の重要性を説明しました。また、音撃カラススナイパーをV-net AAEONと共同で開発した経緯やいくつかの現場での実証試験の結果を示し、音撃カラススナイパーの高いカラス忌避効果が長期にわたり持続することを示しました。
獣害対策は相手が生き物であるため画一的な方法での解決が難しく、対策方法が限られる中で、音撃カラススナイパーが比較的幅広い範囲で使えること、持続的で高い効果が得られることを説明しました。
実際の養鶏場での試験結果では、堆肥舎に飛来するカラスの追い払い実証試験を行い、試験前と比べてカラスの飛来がおよそ10分の1に減少しました(図3)。さらに、その効果は1年以上持続したと報告しました。
養鶏場のほか、市街地にある市役所社屋での試験でも3年以上の長期にわたり効果が続いていることなど、農業分野以外でも有効であったと説明。カラス対策は農業分野だけの課題ではなく、食品製造や物流倉庫などでも求められており、幅広い分野での音撃カラススナイパーの活用が期待できると話しました。
音撃カラススナイパーに搭載されたカラス検知AI以外の農業分野でのAI活用については、実用、または開発中の製品を紹介しました。近年、大企業やスタートアップ企業の方々がAIを使った製品を販売しており、その多くの製品が精度やコストの面で課題はあるものの、使用するシーンを明確にしてコストとのバランスが合えば普及は難しくないと話しました。さらなるAI技術の農畜産分野への普及について前向きにとらえ、農業分野でのさらなるAIの活用により、効率性の高い農畜産物生産や人手不足の解消につながることに期待していると強調しました。
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