群馬県藤岡市 堀越ファーム
地域と共に挑戦し、成長する
2025.04

堀越ファーム(horikoshi farm)
代表:堀越 勝徳さん
農場:群馬県藤岡市白石555
飼養頭数:母豚80頭
出荷頭数:1500頭/年


こだわりの加工品を販売!
群馬県藤岡市の堀越ファームでは、代表の堀越勝徳(かつのり)さん(46)が一人で養豚場を管理する傍ら、6次産業化にも力を入れている。地元の飲食店などとコラボし、自ら育てた豚を加工した豚肉加工品を企画・開発。品数は約20種類にまで広がった。営業も担当する堀越さんが、売り先を開拓し、新たな需要を掘り起こしてきた。「目の前の環境を良くしたい」という思いから、地域活動にも積極的で、レストランや子ども食堂も手がける。何事にも全力で取り組む堀越さんの元には同じ志を持つ仲間が集まり、地域を盛り上げようと奮闘している。
手探りの状態で経営をスタート
群馬県南西部に位置する藤岡市。「群馬の玄関口」として高速交通網が充実していながら、森林や田園風景を身近に感じることができる。堀越ファームは同市に農場を構え、母豚80頭を飼養する。
堀越さんが一人で豚の飼養管理を手がける。就農は2010年で、結婚を機に、義理の父が経営していた養豚業を継いだ。それまでは建設業や飲食店などさまざまな仕事を経験してきた堀越さん。「継いだ当初は廃業寸前でした」と振り返る。当時は、飼料価格の高騰に加え、豚価低迷などかつてない養豚危機が襲いかかり「何をしてもうまくいかなかった」(堀越さん)。所属するJAたのふじやJA東日本くみあい飼料株式会社(現:JA全農くみあい飼料株式会社)の担当者と連携し、養豚経営を学びながら手探りの状態で管理に励み、規模を拡大させていった。
飼料は、精肉・加工向け共通で、出荷の2カ月前から複数のハーブを混ぜて与える。JA全農くみあい飼料の担当者は「臭みがなく、うま味のあるような肉質に仕上がります」と強調する。
23年11月から、藤岡市のJAたのふじ農産物直売所「みっけもん」で豚肉の取り扱いが始まった。堀越さんら藤岡エリア3軒の生産者は「すこやかもち豚」というブランドを立ち上げ、同店でPRしている。

ショーケース付きの移動販売冷凍車

加工品1号はジャーキー 雌豚だけを使用
加工品作りは15年からスタートさせた。きっかけは、野菜などをおすそ分けしてくれる農家仲間へのお返しをどうにかしたいという気持ちからだった。出荷した豚を市場から買い戻せることを知り、自宅で豚肉を保管するところから始まった。
加工品の第1号はジャーキー。地域のイベントで知り合ったしんとうふるさと夢工房(群馬県榛東村)に製造を委託した。「試しに作ってみたらめちゃくちゃおいしかったんですよ」と笑みを浮かべる堀越さん。本格的に加工品の製造・販売に取り組もうと、ショーケース付きの移動販売冷凍車を導入した。
加工品に使う豚は雌だけ。去勢よりも食味が良く、余分な脂肪がつきにくいという。今では1カ月当たり3頭ほどを市場から買い戻し、ソーセージやウインナーなど約20種類に加工している。基本的には、保存料・着色料無添加にこだわっている。農場のホームページでの販売に加え、県内のレストランなどとも取引する。

立ち寄りスポット
JAたのふじ農産物直売所「みっけもん」
住所 〒375-0051群馬県藤岡市本動堂226-1
電話 0274-23-5858
営業時間 9時~18時

NIKUMISOでつながる輪
堀越ファーム × 和屋きらく
飲食店と連携し肉みそを開発
加工品作りが軌道に乗ってきた21年ごろ、常温で保存できる加工品を模索していた堀越さんは、高崎市の居酒屋「和屋きらく」で食べた肉みそをヒントに、自身の農場の肉を使った肉みそ商品を作ろうと思い立った。同店の店主・山﨑越史さん(42)にレシピを考案してもらった。その後、上野村農産物加工センターとレシピを調整し、製造内容を詰め、「NIKUMISO」を完成させた。
群馬県を代表する麦みその一つである上野村の「十石みそ」と粗びきの肉を加えた青色ラベルの「ao」など2種類を販売。1瓶(120g)当たり、重量ベースで49%を豚肉が占める。保存料などを使わず、素材の味を感じられるよう仕上げた。種類を少しずつ増やしていき、今では、伊勢崎市の香り高いニラを使った「nira」など計4種類を販売する。
「和屋きらく」は、肉みそをのせたおにぎりや卵かけご飯を提供し、店内でも肉みそを販売。山﨑さんは「一度食べたお客さんはリピートしてくれます」という。
立ち寄りスポット
和屋(なごみや) きらく
住所 〒370-1213 群馬県高崎市山名町483-1
電話 027-384-4553
営業時間 17時~23時
定休日 火曜日


NIKUMISOのレシピを開発した山﨑さん(右)

協業でつながる 地域の魅力を発信
堀越ファーム × 群馬SAKETSUGU

豚肉の消費拡大に向け、「消費者の日常に溶け込み、普段から思い出してもらうことが大事だと思っています」と堀越さん。自身の農場の商品だけでのPRに限らず、他分野とのコラボレーションにも積極的だ。
コロナ禍をきっかけに始まったのが、「群馬の地酒」の情報発信に力を入れる「群馬 SAKE TSUGU」の代表・清水大輔さん(46)との取り組みだ。共通の知人の紹介で、清水さんが堀越さんに声をかけたことからつながりが生まれた。清水さんは「堀越さんにお会いしてみたらとんでもなくすごい人でした。魂かけていろいろなことをされていて驚きました」と、堀越さん自身や堀越ファームの商品に魅了されたという。
清水さんは、コロナ禍で需要が減った地酒をPRしようと、日本酒とおつまみをペアリングさせた「UCHI SAKE~ぐんまの酒と食のセット~」を提案。複数あるセットの一つに、堀越ファームの「NIKUMISO【ao】」の採用を打診した。「お互いの取り組みは違いますが、目の前にある課題に対して皆で協力し合うという方向性が同じでした」と堀越さん。両者が連携したさまざまな取り組みが始まった。
今年2月には、外務省と群馬県の共催の駐日外交官らが集まるレセプションパーティーで、群馬県の魅力を発信する機会があり、地酒と堀越ファームのジャーキーなどを振る舞った。「これまでいろいろな仲間とつながってきたことで、このような好機に恵まれました。協業することで、お互いに刺激になります」と堀越さんはいう。
堀越ファーム × 群馬 SAKE TSUGU

群馬SAKETSUGU ホームページ
「群馬の地酒情報を発信中!」

コロナ禍に、家飲み需要を取り込もうと販売されたセット(現在は完売)
地域のリビング 子ども食堂
堀越さんは地域活動にも積極的だ。高崎市立南八幡小学校の向かいに、「こちら、学校前食堂」を20年8月にオープンした。堀越ファームや地元の工務店、運送会社などでつくる合同会社が、空き家の有効活用や、子どもたちの居場所作りの一環で始めた。週4日のランチ営業では、堀越ファームの豚ひき肉やベーコンなどを使ったハンバーグやパスタなどを提供し、県外客らでにぎわう。駄菓子屋も備え付けており、児童らが放課後に立ち寄るスポットとして人気となっている。
1カ月に1回開く「子ども食堂」では、200食以上を用意する盛況ぶりだ。地域のために何かしたいという考えを持った学生や近所の人たちがボランティアとして集まり、運営を手伝ってくれている。堀越さんは「地域のリビングになればいいなと思い始めました。今ではみんなの心の受け皿になっているんじゃないかな」という。
こういった動きについて堀越さんは「養豚生産者の最大の武器である“自分が育てた豚肉”があったからみんなとつながっていきました。そして誰かのために自分ができる何かをしようというマインドが広がっていったからだと思います」と語る。
立ち寄りスポット
こちら、学校前食堂
住所 〒370-1213 群馬県高崎市山名町1567-1
電話 027-388-8780
食堂 金・土・日・月 11時30分~14時
※毎月第4土曜日は子ども食堂開催のため、お休み
駄菓子屋 金・土・日・月 11時30分~17時
こちら、学校前食堂 インスタグラム
「子ども食堂の情報などを発信中!」
こちら、学校前食堂 スポンサー募集
「子ども食堂のスポンサーを募集しています。」

高崎じまん
住所 〒370-0849 群馬県高崎市八島町46番地1(高崎オーパ1階)
電話 027-381-6967


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