「秋口にかけての飼養管理について」
秋口にかけての飼養管理について:卵重を適正にコントロールしよう
2022.08
直近5年間の平均気温を見てみると、9月はまだまだ残暑が厳しいのですが、10月になると一気に気温が低下します(図1)。気温が下がると、鶏もたくさん餌を食べ、卵重も大きくなりやすいです。適正水準を超えて卵重が大きくなると、卵の価値も下がるうえ、農場での破卵・ヒビ卵も増えやすくなるなど経営にとってデメリットが膨らみます。今回は、卵重の適正なコントロールについて紹介します。
養鶏研究室
過大卵の目安
鶏は日齢が進むと体重も大きくなり、それにともなって自然と卵重が大きくなります。それでは、何gを超えると、「過大卵」となってしまうのでしょうか? 明確な定義はありませんが、野外農場のデータを解析したところ、卵重が65gを超えたあたりから破卵率が急激に増加する事例を確認しています(図2)。このことから、少なくとも65gに到達する手前で卵重を抑制する工夫が必要です。
テーブルエッグとして販売している養鶏場では、重量あたりの価格(図3)が最も高いMSサイズからLサイズを中心に生産することが理想です。そのためには、中間となるMサイズ(58g以上から64g未満)を目安として、鶏群の平均卵重が60~62gに差しかかる頃に、飼料の栄養濃度の引き下げや飼料摂取量を抑える等により卵重を抑制します。
飼育温度は高めを維持
鶏の飼育温度が低くなりすぎた場合、飼料摂取量が増加して飼料効率が悪化します。結果的に前述の通り、卵重が大きくなりすぎてしまいます。更には、鶏舎内の最低温度が20℃を下回ると、産卵率が明確に低下した事例も報告(本誌135号)されています。
全農の研究所で収集した野外データを解析したところ、比較的高めの温度帯(25~27℃)で鶏を飼育管理することで産卵率を落とすことなく、卵重が大きくなりすぎない、効率的な鶏卵生産につながることが確認されています。ただし、規模の大きな鶏舎では、鶏舎の最下部と最上部の温度差が大きいため、工夫が必要となります。例えば、最上部の飼育密度を薄くする、舎内ファンにより上下に空気を攪拌(かくはん)する等が有効です。
飼料のCP(粗タンパク質)を引き下げる
特に産卵後半において、鶏に必要以上のタンパク質を摂取させると、卵重が増加するスピードが早まります。そこで、産卵後半ではタンパク質やアミノ酸の水準を落とした飼料に切り替える期別給与が一般的に取り入れられています。期別給与により、鶏群の平均卵重が60~62gに差しかかる時期を目安として一段階低い栄養水準の飼料に切り替えます。
飼料価格が高騰する中、卵重をコントロールして少しでも農場の収益性の改善につなげていきましょう。
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