鹿児島全共には「〇〇」が集結 !?
第12回全国和牛能力共進会 鹿児島大会の見どころ

2022.08

 令和4年10月6~10日、鹿児島県霧島市牧園町(種牛の部)と南九州市知覧町(肉牛の部)の2会場で「第12回全国和牛能力共進会」が開催されます。今大会では、特別区として高校及び農業大学校から出品される25頭を含め、41道府県から種牛290頭、肉牛169頭、計459頭が出品される予定です。

 「和牛新時代 地域かがやく和牛力」をテーマとした、今大会の見どころをお伝えします。

(1)目指せ!分娩間隔400日以内

鹿児島全共には「繁殖能力に優れた牛」が集結!?

 種牛の部では、特別区(表1)を除き、母牛や本牛に繁殖能力の条件を設けています。①初産月齢が28カ月以内、②分娩間隔が400日以内、または、 ́②分娩間隔の育種価が各道府県の平均値以上のレベルであること、などが求められています。これは「和牛力」として、和牛に本質的に備わっていると考えられる「年1産–分娩間隔365日」を目標とし、鹿児島大会までに「400日以内を目指そう」という想いを込めて設定しました。

表1
見どころ

 共進会では外貌(外見)審査をしますが、皆さんは分娩間隔の短い牛に共通する外貌上の特徴をご存知でしょうか。

 実は、和牛の審査項目の1つである「品位」と「分娩間隔」は好ましい関係にあります。品位の良い牛とは、体の線が綺麗(輪郭鮮明)で、骨がよくしまり、肩の付着が良い牛ということです。こうした特徴に注目すると、審査理由への理解が深まるかもしれません。

(2)ブランドの価値を高めよう!

鹿児島全共には「地域の宝牛」が集結!?

 出品牛は「種牛の部」「肉牛の部」ともに各出品道府県産であり、雌・雄牛にかかわらず、全て改良組合内で生産されていることが条件となっています。これは、遺伝的改良が選抜と交配の繰り返しである、という育種改良の基本原則に加え、遺伝的多様性の維持を狙いとしたものです。2019年に生まれた和牛の繁殖雌牛の近交係数の平均は9.5%となっており(図1)、早晩に10%に到達する見込みです。

 国内の遺伝資源のみで交配を継続していかなければならない和牛において、近交係数を下げることは不可避であり、上昇のスピードを遅らせることが重要です。各道府県が遺伝的に特色ある集団を構築することが求められており、その一環として、全共では産地の条件を設定しています。

見どころ

 第4区「繁殖雌牛群(表1)」は、母系が3代以上にわたり県内産であることを条件としています。出品牛は、各道府県で代々改良を継続してきた繁殖雌牛です。地域のブランド牛として、名実ともに磨かれてきた全国の「地域の宝牛」を見ることができます。

(3)新たな牛肉の価値観を構築しよう!

鹿児島全共には「美味しい牛」が集結!?

 令和3年度の和牛去勢のA―5等級の割合は56.1%に達し、BMS Noの平均値は8.1となりました(日本食肉格付協会より)。

 現在は、脂肪交雑の多い牛肉のみならず、消費者の多様なニーズに応えていくことが求められています。しかし、脂肪交雑だけでは「美味しい牛肉」にはなりません。なぜなら、牛肉の美味しさの一要素であるアミノ酸は赤身の部分に含まれ、脂肪交雑が増えると、このアミノ酸の量が減ってしまうからです。また、「美味しい牛肉」は脂肪の量だけでなく質も大切です。脂肪の質は、口どけの良さとなり、食感や風味にもかかわります。

 こうしたことから、脂肪交雑の改良を維持しながら、美味しさに寄与する形質の改良が重要となります。

見どころ

 今大会より、6~8区(表1)の、評価を「肉質:歩留:脂肪の質=1:1:1」としました。また、BMS№ 10以上の肉質評価を一律としたのがポイントです。特に注目したいのが、第7区の「脂肪の質評価群」。脂肪の質の比重を高めることを目的に、BMS No 8以上の肉質評価を一律にしました。また、交雑脂肪の形状も評価に加えているのが特徴です。これは、サシが細かく入るものほど筋繊維が細かく、肉質がやわらかくなるからです。また、同じBMS Noでもサシが細かく入る方がタンパク質の割合が高く、アミノ酸の量を増やすことにつながるのが理由です。こうした考え方により、食味性が高いと期待される枝肉を高く評価し、これらの価値を高め、新たな牛肉の価値観を構築しようという狙いがあります。

(4)和牛の担い手を育もう!

「若い力」が鹿児島県に集結!?

 前回の宮城大会で付帯行事として設定された「復興特別出品区」を正式な出品区とし、今大会から特別区「高校及び農業大学校」を新設しました。前回大会の14校14頭から、25校25頭に増え、未来の担い手たちの出場にかける熱量を感じます。
見どころ

 出品校、あるいは県内の学校で生産された牛を出品の条件としています。また、出品牛は14~20カ月齢未満になりますが、授精時点から2年近くが経過しており、出品者として出場する生徒は先輩からのタスキを譲り受け、アンカーとして鹿児島県の舞台に立つこととなります。この過程は「取り組み発表」として審査されます。「出品牛」と「取り組み発表」の2つの成果で競うのが、この特別区の特徴です。

(5)おわりに

 10月には、「繁殖能力に優れた牛」、「地域の宝牛」、「美味しい牛」、「若い力」が鹿児島県に集結します。新型コロナウイルス感染症の影響も危惧される中、安心して大会に来場いただくため、入場時の検温や手指消毒等基本的な感染対策の徹底にご協力ください。また、今大会から式典や「種牛の部」の審査状況、「肉牛の部」のセリ等をオンライン配信することとなりました。詳細は後日、公式HPにて発表いたします。多くの方々に鹿児島全共をご覧いただければと思います。

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