「冬場を迎えるにあたって」
冬場対策:冬場の飲水環境と生産性について
2022.10
※「中研」はJA全農飼料畜産中央研究所の略称です。
飲水が制限されると、飼料摂取量の低下などの要因になります。飲水量は体格や乳量、季節、水質などによって左右されますが、水温によっても変化します。牛が好む水温は17~28℃のため、冬場の水温低下は飲水を妨げます。今回は飲水が牛に及ぼす影響と、冬場の対策を紹介します。
笠間乳肉牛研究室
飲水量と生産性
ステージや生産性によって異なりますが、1日に必要な飲水量は搾乳牛で75~180L、肥育牛で20~50Lとされています。そのため、清潔な水を常に飲めるように管理することが飼料摂取量を高め、成績向上につながると考えられています。
肥育牛を用いた当室の試験では、水槽とウォーターカップで比較したところ、肥育通期において、水槽区で飲水量が20%多く、飼料摂取量が2%増加し、出荷時の体重が16%向上しました(表)。乳牛では飲水量が25%制限された状況下で、制限前と比べ飼料摂取量が12%低下し、乳量が10%低下した報告もあります(Burgos et al.,2001)。子牛でも飲水できる環境下では、飲水できない環境下よりもスターターの摂取量が23%多くなっていました(大森ら,2015)。以上から、子牛から成牛まで飲水量の確保が生産性を低下させないために重要です。
冷水が牛に及ぼす影響
冬場の水温低下は飲水量の減少、ひいては生産性の低下を引き起こします。搾乳牛では冬季に7℃または34℃の水を給与した試験で、冷水区は温水区より飲水量が10%少なくなっていました(小島ら,2015)。子牛はより顕著で、冬季に7℃または16℃の水を給与した試験では、冷水区で飲水量が30%減りました(Huuskonen et al,2011)。また、冷水を飲水すると、ルーメン内の温度が低下し、微生物による飼料分解が抑制されます。そのため、冬場は水温を低下させない対策が必要となります。
冬場の水回りの対策
当室では、冬場に温水器を用いて25℃の温水を牛に供給しています(写真1)。これにより常に牛が好む温度の水を供給でき、同時に凍結防止にも役立っています。また、温水器の設置が難しい場合でも、凍結によって牛がまったく飲水できない状況を避けるために、簡便な防止策として水道管にウレタン製の断熱材を巻き付ける方法があります(写真2)。注意点として、断熱材がむき出しだと牛がかじるため、パイプなどでカバーすることをお勧めします。以上から本格的な冬が始まる前に牛舎の水回りを確認して、冬季も牛が快適に飲水できる環境にしましょう。
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