~搾乳ロボット牛舎におけるネズミ対策~
憎きネズミを退治せよ!

2023.02

※「中研」はJA全農飼料畜産中央研究所の略称です。

 ネズミが畜舎内にすみ着くと、飼料の汚損、咬害による機器配線の断線や漏電、病原体の媒介など、さまざまな経済的損失をもたらします。今回は、当室の搾乳ロボット牛舎で実施しているネズミ対策とその効果について紹介します。

笠間乳肉牛研究室

ネズミとの闘い

 搾乳ロボットは牛の搾乳を自動化する「精密機器」です。電気配線があらゆるパーツに張り巡らされ、正確な搾乳工程を制御しています。一方、搾乳ロボットは壁に囲われた室内に設置されているため、冬場も比較的暖かく、またロボット内では牛の進入を促すための配合飼料が給与されることから、ネズミにとっては食と住が確保された恰好のすみかとなります。ひとたびネズミがすみ着くと、繁殖を繰り返してどんどん生息数を増やします。咬害や糞尿による搾乳ロボット機器の損傷を引き起こし、ロボットが稼働できなくなることもあります(写真1)。また、衛生面でも大きな問題となります。

 当室の搾乳ロボット牛舎でもネズミの被害が多発し、時には人がいてもお構いなしに姿を見せるネズミに苛立ちすら覚えつつ、対策を検討しました。

写真1 配線へのネズミの咬害

試行錯誤したネズミ対策

 最初は、ネズミの忌避剤を配線に塗布しました。忌避剤自体の効果は高かったのですが、搾乳ロボットの細かな配線全てに忌避剤を塗布することはできず、塗布していない箇所への被害が発生しました。次に、粘着トラップを設置し、多少の捕獲にはつながりましたが、設置できる場所が限られており、大きな効果は得られませんでした。

 そこで、専門の防除業者と協議し、ネズミの知覚神経を刺激する振動波装置を設置しました(写真2)。この装置で、まずはネズミを搾乳ロボットに近寄らせないよう試みました。更に、ネズミの進入ルートを調査し、行動範囲と考えられた牛舎外の排水処理施設周辺や搾乳ロボット室内に毒餌の入ったベイトボックスを設置しました(写真3、図1)。牛が毒餌を誤食することがないよう、ベイトボックスは飼槽や搾乳ロボット本体からは離れた位置に設置しました。

図1 ベイトボックス設置場所
写真2 振動波装置
写真3 ベイトボックス

対策が奏功

 対策実施後、毎月、防除業者のコンサルティングを受けながら効果を確認しました。最初は搾乳ロボット室内での毒餌の喫食が多かったのですが、徐々に牛舎外の喫食に移っていった後、次第に喫食自体が少なくなり、生息数の減少を実感しました。また頻発していた搾乳ロボットの故障・停止が大幅に減少しました(図2)。このことは、修繕費の削減につながっただけでなく、牛の生産性や衛生面でも大きな改善となりました。

図2 ネズミ対策前後での搾乳ロボット故障回数の変化

この記事をシェアする

  • LINEで送る
  • Facebookでシェアする

おすすめ関連記事

他の記事を探す

蓄種別
テーマ別