JA全農 家畜衛生研究所
鶏卵GPセンターの拭き取り検査
2023.02
全農クリニックセンターでは、畜産にかかわるさまざまな検査を行っています。その多くは家畜の健康にかかわる検査ですが、畜舎や鶏卵GPセンターなどの環境検査も実施しています。今回は、鶏卵GPセンターで行っている、拭き取り検査の継続的な取り組みについてご紹介します。
衛生状態の確認の重要性
鶏卵GPセンターとはGrading& Packing centerの略で、原料卵を集荷し、洗卵や検卵をした後に、サイズ分けしてパック詰めし、出荷する施設です。鶏卵は“食品”なので、食品工場と同レベルの衛生管理を目指すことが望まれます。しかし、生きている鶏が産んだ卵を“生”で扱うため、衛生状態のコントロールは一筋縄ではいきません。
GPセンターの多くでは、設備・施設・卵の取り扱いなどについて基準を定め、衛生状態を保っています。その衛生状態を検証する手段の1つとして、「拭き取り検査」があります。
拭き取り検査は、鶏卵の特定箇所を検査用の資材(写真1)で拭き取り、微生物の数を測定することで汚染度合いを数値化し、確認するための検査です。一般的な清浄度の指標となる一般生菌数や、糞便等の汚染指標となる大腸菌群数などの検査を行います。
GPセンターで実施している拭き取り検査の菌数の基準として、一般的に広く用いられている指標はありませんが、学校給食の調理室では、拭き取り検査結果として表1のような目安例が示されており、これを参考に指導を行っています。
拭き取り検査の活用事例と経過
古くからある農場直結のGPセンターで拭き取り検査を実施した際の活用事例を紹介します。このGPセンターでは、設備の清掃や洗浄方法を定めて実施していましたが、これまでその効果を検証したことがなく、今回初めて拭き取り検査を実施することになりました(写真2)。
表2は拭き取り検査の結果です。最初の検査(11月実施)では、予告したうえで従業員の見ている前で採材しました。更に、12月には稼働時間前の早朝に抜き打ちで実施しました。その結果、多くの拭き取り箇所で要改善の基準となる105個/cm2以上の一般生菌数が分離されました。
拭き取った箇所は全て写真に残し、検査結果と照合します。報告会で従業員の皆さんと共有し、対策を練るうえでの参考にします。
この結果を受け、従業員全員参加の報告会と対策会議を開催し、拭き取り箇所を現場で確認し、菌数を減らすにはどのような取り組みが必要か話し合いました。対策は持続可能な取り組みである必要があり、出し合ったアイデアについて、継続可能かどうかも含めて検討しました(表3、写真3)。
表3の対策が浸透した1カ月後の1月に再度、抜き打ち検査を実施したところ、大幅な改善が見られました。この時も報告会を開催しましたが、従業員からは驚きと喜びの声が上がり、衛生意識が高くなっていることを感じました。
ところが、7カ月後となる8月の抜き打ち検査では、対策前の12月の検査結果と同様の結果となりました。菌数が多くなる傾向のある夏場の検査であることを考慮しても、衛生状態は対策前に戻ってしまったといえます。この時は、全従業員に集まっていただき、結果を報告するとともに、1月時点で決めた対策の取り組み状況について点検し、再度徹底をお願いしました(写真4)。
写真3. 洗卵ブラシの検査では、心棒部分の洗浄が十分でないことが判明。意識して洗浄することにしました。
このような検査結果の推移は、拭き取り検査に限らず、よく目にします。問題点を明らかにするとともに、対策を実施し、その結果を確認することで、更なる改善に取り組んでいくのですが、その中でどうしても対策が緩みがちとなり、検査結果が悪くなる時期があります。マニュアルを作成し、その通りに実施しているつもりでも、効果が上がっていないことも往々にしてあります。
そうした事態を防ぐ意味でも、継続的に検査を実施し、結果を画像や数値のような見える形にして、常に効果を確認する必要があります。検査の活用について、ぜひ一度ご検討ください。
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