JA全農提携 ウィリアム・H・マイナー農業研究所 アメリカ合衆国ニューヨーク州
米国で酪農・畜産の最新技術を研究 マイナー研の小野淳也さん 

2023.07

 JA全農は1996年から業務提携する、米国ニューヨーク州のウィリアム・H・マイナー農業研究所(以下、マイナー研)に毎年1人、研究職員を派遣しています。2022年4月から駐在するのが小野淳也さんで、マイナー研との共同研究に加え、米国の酪農・畜産業界に関する最新技術を研究しています。今回は、駐在員の小野研究員がマイナー研での研究の一部をご紹介します。

マイナー研 & 海外駐在員(JA全農の研究者)のご紹介

ウィリアム・H・マイナー農業研究所

搾乳牛を約500頭飼養する、米国内でもトップクラスの研究所。教育や地域貢献にも力を入れており、大学生を対象とした農場実習や、ニューヨーク州立大学プラッツバーグ校の調査研究拠点としての施設開放などを行っています。また、周辺地域の酪農家(カナダを含む)に最新の酪農情報を提供しています。

JA全農 畜産生産部 飼料畜産中央研究所 研究職員 小野淳也さん

2012年入会。日々、マイナー研との共同研究及び、米国における酪農畜産産業に関する最新の研究に取り組んでいます。

1 米国肉牛の一般情勢

現地の精肉店の様子

 米国内の牛飼養頭数約8930万頭(USDA/NASS 2023 Jan)のうち、肉用牛は2890万頭で、中西部から中南部の5州(テキサス州、ネブラスカ州、カンザス州、オクラホマ州、ミズーリ州)で肉用牛の7割以上を生産しています(図1)。

 2022年は記録的な干ばつが発生し、繁殖母牛の淘汰が加速したため、肉牛の年間出荷頭数は14年以来の低水準となりました。そんな中、急激に増加しているのは酪農場から産出される肉用牛です。10年の年間出荷頭数は100万頭程度でしたが、23年には900万頭まで増加しています。内臓廃棄等の課題があるものの、アンガス種と比べ枝肉の評価は高く、新たな牛肉資源として生産、研究の両面から注目されています。

2 米国での最新の研究

 米国でも労働力不足が大きな課題となっています。ICT(情報通信技術)機器を活用した飼養管理に加え、最近では体温や活動量の測定による体調管理等の研究が盛んです。他にも、牛のゲップ(メタンガス)低減の研究や、素牛のトラック輸送時のストレスを軽減する飼養管理、ビタミンやミネラルの給与、負担がかからない積載方法などの研究が行われています。

3 研究紹介 ~子牛の長期輸送~

 23年に行われたTri-State-Dairy Nutrition Conferenceにおける研究を紹介します。子牛のアニマルウェルフェアについて研究するPempek博士によると、子牛を長期輸送すると、多くの子牛に低血糖(74%)と脱水(68%)の症状が見られました。また、輸送期間が短い子牛は、長い子牛と比較して死亡率の低下、下痢の低下、正常な血糖値の維持、体重増加率が高い、などの結果が示されています。
 子牛の長期輸送を行う場合は、分娩後の初乳給与はもちろん、図2のような対策が必要です。トレーラー内を清潔に保ち、気温にも気を配り、低温時はカーフジャケットの着用、気温が高くなることが予想される場合は夜に移動する事が望ましいとされています。また、輸送中の振動は牛の重心が変化して不快な状況を作り出すこともあります。子牛をトレーラーの進行方向に対し、垂直に立たせることで振動が少し緩和されます。
 そのほか、Deters博士とHansen博士の研究によると、輸送中の牛の酸化ストレス対策として輸送前のビタミンCの注射を推奨しています。ビタミンCの注射により、輸送後の日増体量が「処置しない場合」と比べ、有意に高くなったと報告しています(図3)。

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