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配合飼料安定基金 概要と現在の情勢を解説

2023.07

飼料高騰時に畜産経営への影響を緩和するための「配合飼料安定基金」の基本と、現在の情勢について「くみあい配合飼料」の例をもとに分かりやすく説明します。

制度の目的

配合飼料の値上がり時に補てん

「配合飼料安定基金」とは、生産者と飼料メーカー(全農と、県連もしくは飼料会社)が定期的に積み立てた財源と、国からの財源を合わせた補てん財源を使って、配合飼料の価格が大きく値上がりした時に生産者に補てん金を交付する制度です。

通常基金を管理する3つの基金

 通常基金には、飼料メーカーごとに3つの組織があります。そのうちの1つ「全農基金」は、全国の総合農協が供給する「くみあい配合飼料」を取り扱う全農系の基金です。2つ目の「畜産基金」は、全国酪農業協同組合連合会、全国開拓農業協同組合連合会、日本養鶏農業協同組合連合会、全国畜産農業協同組合連合会が供給する配合飼料の安定基金。3つ目の「商系基金(全日基)」は、そのほか多くの商社系飼料メーカーが供給する配合飼料の安定基金です。それぞれが供給する飼料を使って補てん金を受け取るには、それぞれの基金の窓口のJAや、県の基金協会と契約する必要があります。
 農場で使っている飼料メーカーと異なる系列の基金と契約をすると、補てん金を受け取ることができません。複数の系列の飼料を使っている場合は、それぞれの基金の窓口と契約を結びます。

大幅値上がり時には異常基金がサポート

 通常基金のみでは対応が困難なほど飼料が大幅に値上がりした際に、通常基金とあわせて補てん金を交付するのが「異常基金」です。この基金の財源は国と全農が1:1で積み立てており、配合飼料供給安定機構が管理しています。

契約の締結

 配合飼料安定基金は4年を1つの事業単位としています。積立金を納め、補てん金を受け取るという基本の流れについて、基本契約を4年ごとに結びます。その上で毎年「数量契約書」を結びます。「数量契約書」には、「畜産物販売証明(販売伝票の写し等)」を添付し、四半期ごとの飼料の購入予定数量(毎年の実態に合わせる)を記入する必要があります。この数字は「契約数量」と呼ばれ、補てん金の計算などに必要となります。
 契約はJAと締結します。締結の締め切りについては、基金や地域によって取りまとめの時期が異なるため、様式や締結先とあわせて配合飼料の営業担当者に確認しましょう。

積立金の納付

 4月、6月、9月、12月の月末が積立金の納付時期にあたります。
 令和4年度の全農基金では、契約数量をもとに、生産者は1トンあたり600円を積み立てます。県連と全農の積立は合わせて1トンあたり600~1200円の範囲と決まっておりますが、現在は補てん財源が少ないので上限の1200円で積み立てています。
※単価は毎年見直されます。詳細は担当者に確認ください。

補てん金額の計算から交付まで

「補てん単価」の決め方

 補てん単価は当該の四半期の翌月末に決まります。(4~6月期の補てん金単価は7月末に決定)計算方法は、以下の通りです。
 輸入5原料(とうもろこし、マイロ、大豆粕、大麦、小麦)の通関統計をまとめて、当該の四半期の加重平均価格と、その四半期を含まない直近4四半期(=1年間)の加重平均価格を比べて、当該四半期の加重平均価格のほうが高ければ、その差が補てん単価の上限となります。特別な事情がなければ補てんは上限の単価で行い、補てん単価は50円単位で切り捨てます。ただし、単価が250円未満の場合は補てんを行いません。
 補てんは、「通常基金」からの「通常補てん」が優先して交付されます。値上がりの幅が大きく、当該四半期の加重平均価格が直近4四半期の加重平均価格と比べて115%を超えて高騰した時は、その部分は「異常基金」からの「異常補てん」が交付されます。(補てん単価の内訳として「通常補てん」と「異常補てん」があります。「異常補てん」は補てん単価に上乗せされるものではないのでご注意ください)

「補てん対象数量」の決め方

 当該の四半期に実際に出荷された数量と、その四半期の契約数量を比べて、少ないほうを「補てん対象数量」とします。配合飼料のうち穀類、糟糠類、植物性油かす、動物性飼料の4区分の原料が50%を超えている飼料(原材料が3種類以下の飼料は除く)が、基金の対象です。
 代用乳(脱脂粉乳及びホエイパウダーを主原料とする)や乳製品が50%を超えるもの、混合飼料(二種混合)、糖蜜飼料(糖蜜混合)、単味飼料と養魚飼料などは安定基金の対象外です。TMR(完全混合飼料)は数量の全部が補てん対象になる場合と、一部しか補てん対象にならない場合があります。対象外の製品リストがあるので確認が必要です。もちろん、素畜やヒナ、薬品なども対象外です。

「補てん金額」の計算

 「補てん単価」と「補てん対象数量」を掛け合わせた金額が「補てん金額」になります。「補てん単価」のほうが遅く決まるため、当該四半期の翌月末に「補てん金額」が決まります。

補てん金の交付

 補てん金は補てん対象四半期の翌々月に交付されます。飼料代金や積立金、売掛金などとの相殺はできません。生産者の収入とみなされるので課税対象となります。

数量変更について

 数量契約書の記入時に“予期していなかった廃業”の場合、安定基金の契約解除が認められます。しかし、規模拡大・縮小や、給与形態の変更による使用数量の増減、飼料メーカーの変更による契約解除は認められません。災害や疾病などによる特例的な措置は相談が必要です。
 積立金の請求を取り消す事務処理には時間を要しますので、数量変更の手続きは配合飼料の営業担当者と相談の上、解約する四半期の前々月までに行いましょう。

四半期の流れ(7~9月期を事例とした場合)

 補てん金交付の前に契約数量変更・積立金納付・飼料の購入があります。補てんが連続すると、これが3カ月ずつずれて発生することになります。

借入による「通常補てん」

 令和3年度から現在に至るまで、配合飼料価格の高騰により高額の補てんが続いています。生産者とメーカーの積立金だけでは「通常基金」の補てん財源が不足するので、3つの基金とも配合飼料供給安定機構から資金を借り入れて補てんしています。
 借り入れた資金の返済は令和6年以降の積立金の一部から行います。補てん金は過去の積立金を使っていますが、借入による補てんは将来の積立金も使って補てんをしている状態とご理解ください。
 平成19年度、平成25年度にも同様の借入補てんによって高額の補てんを行い、その後の返済を無事に完了しています。今回も同様に、生産者の皆さまにご負担をおかけすることのないよう進めています。
 また、返済を円滑に行うため、令和5年度以降の安定基金の継続契約の取り組みを行っています。令和5年度以降の基金契約数量を令和4年度の80%を超える数量にすること(ただし規模縮小などの合理的な理由がある場合は例外)を基本とし、契約数量を20%以上減らす場合は、減少割合に応じて借入部分に相当する補てん金の一部を返納いただくか、もしくは、返納するまで令和6年度以降の基金契約をしないといった選択をお願いすることとしています。

令和5年度の「緊急補てん」

 令和5年度4~6月期から「緊急補てん制度(新たな特例)」が始まります。これはP44の「補てん単価の決め方」でふれた補てん基準輸入原料価格の計算を直近10四半期(=2・5年間)に延長して、補てんが出やすくするとともに、補てん財源に国の財源を活用する制度です。
 こちらは3つの基金団体ごとに対応が異なる可能性があるほか、年度途中にルールが追加される可能性があります。最新の情報をそれぞれの基金団体の担当者に確認してください。

基金団体による差に注意

 現在、補てん金の交付方法が基金団体によって異なっています。全農基金と畜産基金は「通常補てん」を従来通りの時期に交付しています。商系基金は通常補てんを従来のように一度に交付せず、分割して交付することとしています。基金団体によって通常補てん財源の状況に差があり、借入や返済の流れなど運用のルールも基金ごとに異なっています。詳しくは、それぞれの基金団体の担当者にご確認ください。

最後に

 本制度は、配合飼料の価格変動が畜産生産者の経営に与える影響を緩和するために作られ、現在も畜産生産者の多くが活用する制度です。全農基金は生産者の資金繰り支援を最優先に考え、全国のJAや県連と連携した制度運用を行ってまいりました。全農の配合飼料安定基金は、今後もJAグループが行う生産者支援の一環として制度の運用に最善を尽くしてまいります。

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