JA菊池キャトルブリーディングステーション
優良な素牛の安定供給目指す〜「アットモーメント」の試験実施〜

2023.07

 熊本県のJA菊池キャトルブリーディングステーション(以降、CBS)は、管内の肥育生産者に優良な素牛を供給する拠点として欠かせない存在となっています。今回はJA菊池CBSの取り組みと、生産性向上のため試験的に使用したICT機器「アットモーメント」についてご紹介します。

JA菊池CBSの取り組み

CBS開設3カ月後に「農場HACCP」認証を取得。消費者へより安全・安心な畜産物の提供を目指す

肥育素牛確保へ年間500頭を供給

 菊池市は県内肥育牛の年間出荷量の約40%を占める一大肥育地帯であるものの、その肥育素牛は一部を他県に依存してきました。そこで、JA菊池はこの状況を改善するため、2017年に肥育素牛の確保・安定供給を目的としたCBSを開設しました。また、関係機関や外部専門家の指導を受けながら議論を重ね、JA主体の施設としては全国初の「農場HACCP」の認証を取得しました。

 開設6年目の現在は、管内の酪農家から預かった乳用牛約210頭、JAが所有する雌の繁殖和牛203頭、和牛子牛約400頭を管理。管内の肥育生産者に年間約500頭の和牛子牛を供給する拠点となっています。

経済連・くみあい飼料と連携 上物率97%を記録

 子牛の体調は変化しやすく、管理が難しいのが課題です。JA菊池CBSでも開設当初、飼養管理の壁に直面しました。課題を克服するため、JA菊池CBSとJA熊本経済連、ジェイエイ北九州くみあい飼料(株)、JA全農が連携。熊本経済連が推奨する「飼養管理マニュアル」に基づいた管理と、北九州くみあい飼料が供給する配合飼料による給与体系で、優良素牛の安定的な生産・供給を実現しました。

 管内への素牛供給は、気候などの環境変化や移動距離を最小限にすることで子牛が受けるストレスを軽減できるというメリットがあります。肥育生産者からも「良いスタートを切ることができる」と好評です。 

 22年度の枝肉成績は、上物率97%の好成績を記録。枝肉成績が出始めてからは、管内の肥育生産者の間で更にCBSへの期待が高まっています。平田所長は「供給する素牛が枝肉となって結果が分かるのは2年後。今年度は繁殖牛の更新が始まるので、これまで以上に管理を徹底し、優良な素牛を供給していきたい」と意気込みを語ります。

JA菊池CBS

平田所長

哺育担当の眞嶋さん

「アットモーメント」を扱うライブストック・アグリテクノ(株)の担当者

JA菊池キャトルブリーディングステーション

所在地:熊本県菊池市泗水町豊水300-1
開設:2017年
飼養頭数:乳用牛約210頭、
雌の繁殖和牛203頭(JA所有)、和牛子牛約400頭
年間供給頭数:約500頭の和牛子牛を供給

子牛用健康管理ICT機器  「アットモーメント」

アットモーメントは5月から、全農畜産サービス(株)で販売をスタートしました!お問い合わせはお近くのJAまで

電子タグで活動量を計測 不調の子牛を早期に発見

 JA菊池CBSは、更なる成績向上に向けて、23年4月から子牛用健康管理ICT機器「アットモーメント」の試験をスタートしました。「アットモーメント」は、首にかけた電子(クラウド)タグが子牛の活動量をリアルタイムで計測。活動量をデータ化して可視化することで、不調の子牛を早期に発見することができるICT(情報通信技術)機器です。

 子牛の生存率を上げることは経済的な損失を防ぐことに直結するため、外部導入子牛の健康管理で成果を上げることが期待されています。

 優良な素牛を地域の生産者に安定供給するという「責任」がつなぐ信頼関係。これからも管内の繁殖基盤を支える重要な拠点として、JA菊池CBSの活動に目が離せません。

気になる子牛について、関係者で対応を検討

ハッチによる管理で一頭一頭の状態をチェック

タグは小型で軽量。振動発電により電池交換は不要

アットモーメントとは?

 首にかけたタグで子牛の活動量を測定します。日々の活動量の推移を24時間365日モニタリングすることで、人が気づかないような子牛の変化を発見し、早期に対処することで健康状態を改善することができます。

 また、個体ごとの活動量の変化はグラフ化し、スマートフォンやタブレット、PC等で確認できるほか、処置なども記録でき、飼養管理記録としても活用可能です。万一、子牛の活動量に異常が認められた時は、メールやLINEで通知を受け取ることもできます。

子牛の活動をモニタリング。変化を早期に発見する

アットモーメントの導入効果

  1. 活動が低下している子牛を目視で気づきにくい段階で発見・検知。
    →早期発見、早期治療により治療費を削減し、牛の育成状態を改善します。
  2. 子牛の見廻り業務の平準化を図れる。
    →業務経験が浅くても子牛の疾病兆候をチェックすることが可能です。
  3. いつでもどこでも子牛の活動状態の確認が可能。
    →治療後の回復具合などを牧場以外からでも確認できます。
  4. 業務の効率化や経営強化。
    →死廃率の改善、治療期間の短縮により収益の改善につながります。
  5. 定期的に電池交換などのメンテナンス作業が発生しない。
    →電池未使用のセンサーだからこそ実現可能。

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