岐阜県立加茂農林高等学校
2023.07
「地域との連携を大切に、地域から必要とされる学校」という方針を掲げる、岐阜県立加茂農林高等学校。その言葉通り、県内の農業を支える試みにも積極的に取り組んでいる。
また、生徒たちが育てた農畜産物を販売する店舗も校内にあり、地域住民に広く愛されている。最新技術を柔軟に実習に取り入れながら、未来の農業スペシャリストを育む、“かものう”の魅力を紹介する。
JGAP認証を取得し効率的で優しい畜産に
加茂農林高校の生徒は、2年生の1学期後半から各専攻に分かれ、各々の興味・関心に合わせて専門的な知識を深めていく。取材時に立ち会ったのは、「動物」を専攻した3年生の実習。1年時から、段階的に牛の扱い方を学んできたという。この日の実習内容は、牛の体重測定。実習が始まると、生徒たちはテキパキと準備を進め、協力しながら牛を重量計へ。中には重量計に乗ることを拒んで立ち止まる牛もいたが、生徒たちは根気強く鼻綱をたぐり、全ての牛の体重測定を終えた。
同校で飼養されている牛は、いずれも毛並みが良く、人慣れしている。日々、生徒たちが大切に扱っているためだ。2019年には畜産GAPチャレンジシステム(肉牛)認証を取得し、昨年度は授業の一環で畜産におけるJGAP認証に挑戦し取得。「JGAP認証を取得するにあたり、生徒たちと話し合いながら、安全と効率性に主軸を置いた作業内容を考案しました」と、生産科学科の安藤慎介先生は話す。
特徴
スローガンは、「いのちを育み そして いのちから学ぶ」。夢の実現を目指す生徒一人ひとりの良いところを見つけ、励まし支える教育を推進している。校舎は、JR美濃太田駅あるいは古井駅、美濃川合駅より徒歩20分の場所に位置する。校舎をぐるりと囲むようにして、水田や牛舎、鶏舎など実習のための施設が設けられている。
ヤギもいるよ!
先進技術を駆使したスマート畜産!
最新のICT技術を導入してスマート畜産に挑戦!
昨年度から、牛体温監視システム「胃診電信」を導入し、ICT(情報通信技術)を活用した牛の管理を開始した。「和牛甲子園」に出品予定の牛をはじめ、数頭の牛のルーメンに、温度センサーが入っている。「生徒たちはスマートフォンでいつでも牛の胃の温度を確認できます。このセンサーや牛舎へのカメラ導入によって、牛の発情や分娩のタイミング、健康状態を把握しやすくなりました」(安藤先生)。
牛の出産シーンに立ち会ったという3年生の男子生徒は「子牛が生まれた瞬間、本当に嬉しかったし感動しました」と話す。
機器を活用し、胃の温度データを活用した研究も始めた。「稲わらを多めに与えた場合のルーメンの温度変化を調査予定です。稲わらを多めに与える牛と通常量を与える牛を用意し、ルーメンの温度を比較することで、給水や給餌量の適正化に役立てることができればと思っています」と話す。
牛の様子がリアルタイムで分かる!
飼育のこだわり
「牛心伝心」となるよう、優しく声がけ
「碁盤乗り」の足運びを調教中
畜産調教部では、高等調教技術である「碁盤乗り」の練習が行われている。練習では、牛に繰り返し声をかけたり鼻綱を引いたりしながら、碁盤サイズの足場に牛を誘導する。「牛が足場に立つようになるまで、半年ほどかかります。牛と信頼関係を築きながら、コツコツと練習を積み重ねることで、生徒たちは成長できるはず」と、安藤先生は語る。
・大塚 結楠(おおつかゆいな)さん
和牛甲子園は、高校生活の集大成。参加できるのを楽しみにしています
・秋田 凪生(あきたなぎは)さん
扱いが難しいと感じるシーンもありますが、牛が大好き。みんな可愛いです
・橋本 美桜(はしもとみお)さん
実習で牛と触れ合ううち、どんどん牛が好きになりました
左から橋本さん、秋田さん、大塚さん
地域農業のためにできること
地域農業への貢献を目指し産学連携に取り組む
「子牛の生産が需要に追いついていないのが課題です。飛騨牛のブランド維持・拡大のため、子牛の増産の研究に取り組むことにしました」と話す安藤先生。2017年から双子を生産するための取り組みを始め、20年には双子の子牛が誕生した。農高での成功事例はあまり例がないという。
双子は「第6回 和牛甲子園」に出品。更には、獣医師、岐阜大学、JA全農岐阜と連携し、双子生産とそれに関連したフリーマーチン(生殖能力をもたないメスのこと。双子によく見られる)の研究を行い、「取り組み評価部門」で発表した。
今年度は、ルーメンの温度変化に加え、県産の飼料用米を給与する研究に取り組んでいる。研究で良い結果が得られた際は、地域農家にも広めたいと安藤先生は意気込む。
牛との信頼関係が大切です!
生産科学科 安藤慎介先生
セールスポイント
設備の整った鶏舎
お目当ては、かものう産ブランド卵「ふぞろいのたまご達」
昨年、鶏舎の設備が一新され、鶏たちへの給餌や集卵、洗卵といった作業が、機械でできるようになった。鶏舎で採れる卵は、多い時で1日400個ほど。これらは校内販売所「グリーンショップかものう」で販売する。加茂農林高校の卵は、“新鮮でおいしい”と地域住民にも評判だそう。取材時も開店前から地元の“かものうファン”の長い行列ができていた。
・鈴木 匠(すずきたくみ)君
学校の卵の知名度が高く、人気なことを誇りに思っています
・木村 優友(きむらゆゆ)さん
皆で愛情をもって鶏を育てています。学校で採れた卵は、本当においしいです
左から木村さん、鈴木君
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