冬場を迎えるにあたって
冬場の飼養管理を徹底し 効率の良い生産を目指そう!

2023.10

 季節を問わず、採卵鶏の産卵成績を最大化し、農場の収益性を向上させるためには、最適な飼養環境を整えることが重要です。特に夏と冬の寒暖差が激しい日本では、季節に適した鶏舎の空調管理を行う必要があります。夏場は暑熱ストレスの影響で飼料摂取量が抑えられ、飼養成績や卵質が悪化しやすい一方、冬場は環境温度の低下により必要以上に飼料を消費するため、経済性が悪化しやすくなります。今号では冬場に向けた鶏の飼養管理のポイントと飼料栄養価について紹介します。 

養鶏研究室

ポイント

飼料摂取量と卵重を抑え、冬場に価格の高い小玉を多く生産することが重要

⇒効率良く生産性を向上させるため、冬場に向けた対策の見直しを!

具体策

  • 真冬でも舎内の換気を最低限に抑え、舎内温度25℃前後を維持
  • 低粗タンパク質(CP)飼料に酵素剤を使用、もしくはアミノ酸バランスを調整することでCP水準を抑制

鶏が受ける冬場の影響

図1 温熱環境と家畜の体温と熱生産量の関係
※愛媛県、第139号家畜衛生だより、令和5年6月発行
表1 鶏の適温域

 鶏の体温はおおむね41~42℃で維持されており、環境温度の変化にともない生理的な反応も変化します。飼育環境の温度帯は図1のように分類されます。
 一般的に、産卵鶏やある程度発育したブロイラーにおいて、15~25℃の温度帯は「熱的中性圏」と呼ばれ、鶏にとって生理的に暑くも寒くもない状態を指し、鶏が最小限の労力で体温を維持できます(表1)。しかし、熱的中性圏を下回る寒冷環境下では、体内での発熱量を増やす必要があり、そのために飼料摂取量も高まりやすくなります。

 鶏が体内で使用するエネルギーは、大きく分けると生命活動を維持するための「維持エネルギー」と卵を生産するための「生産エネルギー」に分けられます。特に冬場では体温を維持するための維持エネルギーが大きく消費されることが明らかとなっています。そのため、冬場の飼料摂取量が過剰に高まることを避けるには、真冬でも舎内の換気を最低限に抑え、舎内温度ができるだけ高く保たれるようにします。より具体的にいえば、気密性の高いウインドウレス鶏舎において、鶏から発生する熱により冬場でも舎内温度が25℃程度に維持されることが好ましいです。開放鶏舎が冬場において、ウインドウレス鶏舎と比較して飼料要求率が悪化しやすい理由はこの点にあります。
 飼料摂取量が増加すると、結果的に卵重が大きくなり破卵率の増加にも直結します。当所での過去2013~22年の調査において、夏場(7~9月)の平均卵重と飼料摂取量を100とした時、いずれも冬場(1~3月)においては明らかに増加しました(図2)。

図2 採卵鶏の夏場(7~9月)と冬場(1~3月)の飼養成績
※全農中研調べ(2013年~22年)

鶏卵相場状況

 2010~23年における季節別の鶏卵相場について目を向けると、夏場(7~9月)にはLサイズやLLサイズの価格が高まり、冬場(1~3月)にはMSやMサイズの価格が高まっていることが分かります(図3)。冬場には、飼料摂取量が高まり、卵重が大きくなりやすく、MやMSサイズの卵が不足する事態に陥ります。
 冬場に飼料摂取量と卵重を抑えることは、不足しやすい小玉を多く生産することや前述した破卵率を低く抑えること等とあわせて、経済性の面でも農場経営をサポートします。

図3 冬場(1~3月)と夏場(7~9月)の全農たまご東京相場の平均(2010~2023年)

冬場の飼料栄養価

 飼料面では、冬場に限らず摂取する飼料の粗タンパク質(CP)の水準を低めることで卵重が抑制されることは広く知られており、この際に酵素を併用することで、飼料のCP水準を低めたとしても、産卵率を維持しながら卵重が抑制される、という結果が得られています(図4)。また、酵素剤の使用以外にもCP水準を低めたとしても、特定の単体アミノ酸を活用することで、同様の効果が得られることも確認しています(図5)。
 実際の現場では、季節に応じて飼料中のCP水準を切り替えるタイミングを変えるなどして、卵重が過度に大きくならないように工夫している事例もみられます。

図4 低CP飼料に酵素剤を添加した際の採卵鶏の飼養成績
※全農中研調べ(対照区を100とする)
図5 低CP飼料でアミノ酸バランスを調整した際の採卵鶏の飼養成績
※全農中研調べ(対照区を100とする)

 季節を問わず農場全体として卵重が大きすぎる、特に冬場はさらに大きくなるという兆候が見られる際には、飼料会社の供給体制とも相談しながらになりますが、CPを早いステージで抑制する、あるいは前述のような技術を用いたCP抑制飼料への切り替え等を検討されてはいかがでしょうか。
 卵重の話からはやや離れますが、冬場は空気の乾燥にともない、人も鶏も疾病リスクが高まるなか、酵母細胞壁に含まれる“グルカン”と呼ばれる成分には、生体の免疫力を高める効果があることが一般的に知られています。“グルカン”を含む混合飼料は養鶏用の混合飼料としても流通していることから、これらを活用してみることもおすすめです。

冬場の対策の見直しを!

 ここまで説明したように、鶏の生理上、環境温度と飼料摂取量は密接に関係しており、現状の飼養環境と飼養成績を把握することは重要です。鶏の飼育段階や季節に合わせた飼料切り替えがなされているか、また、空調管理が徹底されているか等を今一度確認し、一層効率的な経営につなげていただけると幸いです。
 飼料栄養に関することで、ご不明な点等がございましたら、お近くのJA、経済連、くみあい飼料、科学飼料研究所の営業担当までご相談ください。

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