「冬場を迎えるにあたって」
冬場の飲水環境と生産性について

2023.10

牛の飲水量は体格・乳量・季節・水質などによって左右されますが、水温も大きな要因の一つです。牛が好む水温は17~28℃のため、冬場の水温低下は飲水を妨げます。今回は飲水量と生産性の関係、冷水給与が牛に及ぼす影響、冬場の飲水環境の整備方法を紹介します。

笠間乳肉牛研究室

ポイント

  • 生産性向上には、清潔で十分な量の飲水確保が重要!
  • 冬の到来前に、水温を低下(17℃未満)させない対策を!

飲水量と生産性

 1日の飲水量は、肥育牛で20~50L、搾乳牛で75~180Lとされています。肥育牛を用いた当室の試験で、水槽とウォーターカップで飲水量を比較しました(写真1)。
 肥育通期において水槽区は17,310L、カップ区は14,210Lと水槽区の飲水量が20%多くなりました。その結果、水槽区はカップ区と比べて、飼料摂取量が2%増加し、増体が16%向上しました。
 また、乳牛で自由に水を飲むことのできる群と水を飲む回数を1日2回に制限した群を比較すると、後者の乳量は2.6%減少しました(Williams et al., 2016)。
 以上のことから、清潔で十分な量の飲水を確保することが生産性を向上させるための重要なポイントとなることが分かります。

写真1 水槽とウォーターカップの写真

冷水が牛に及ぼす影響

 冬場の水温の低下は、飲水量の減少を引き起こします(日本飼養標準 肉用牛,2022年版)。飲水量の減少は、肥育牛は尿石症、乳牛は泌乳量の減少など、生産性低下の要因となります。水温に着目したデータによると、乳牛に対し冬季に7℃または34℃の水を給与した試験では、冷水区は温水区よりも飲水量が10%少なくなっていました(小島ら,2015)。

 子牛はより顕著で、冬季に7℃または16℃の水を給与した試験では、冷水区で飲水量が30%減りました(Huuskonen et al., 2011)。さらに、飲水温度が低いと内部から体温が奪われ、ルーメン内の温度が低下し、微生物による飼料分解が抑制されます。気温が低下する冬場こそ、水温を低下させない対策が必要です。

冬場の水回りの対策

 当室では、給水管から直接水を給与している牛舎は、冬場に温水器を用いて約25℃の温水を供給しています(写真2)。これにより常に牛が好む温度の水を供給でき、同時に凍結防止にも役立っています。また、温水器の設置が難しい場合でも、凍結によって牛がまったく飲水できない状況を避けるために、簡便な対策として水道管にウレタン製の断熱材を巻き付ける方法があります(写真3)。注意点として、断熱材がむき出しだと牛がかじるため、パイプなどでカバーすることをお勧めします。

 一方、バケツで水を給与しているハッチ飼いの子牛には、38℃程度の水をそれぞれ8時、12時、16時に給与しています。この給与に加えて、水温の低下を防ぐために約60℃のお湯を10時、14時、18時に追加しています。小まめに水を替えたり、お湯を足したりすることで、水温を低下させないよう心がけています。本格的な冬が始まる前に牛舎の水回りや給水方法を確認して、冬季も牛が快適に飲水できる環境にしましょう。

写真2 当室で使用している温水器
写真3 水道管の凍結防止例

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