BB肥料に組み合わせた 畜産由来の堆肥活用の取り組み

2023.10

 原料の多くを輸入に頼る化成肥料の価格が高止まりしており、生産者の経営を圧迫しています。ロシアのウクライナ侵攻による供給量の減少や、中国の輸出引き締め、為替の円安、製造コストの高騰などが要因です。こうした中、家畜の排せつ物などを原料にした堆肥を活用する取り組みが積極的に進められています。
 今回は畜産農場と肥料工場が協力して、畜産由来の堆肥を活用する取り組みをご紹介します。

【JA全農畜産生産部】

畜産農場 住田フーズ

堆肥の出荷先確保が課題

 住田フーズ株式会社(岩手県住田町)は、鶏肉の生産を行うJAグループの企業です。地域の生産者や自社農場で育てたブロイラーを加工し、食肉として出荷しています。
 ブロイラーを飼育する際に必ず出てくるのが鶏ふんです。住田フーズではグループ会社の有限会社気仙環境保全で、鶏ふんを炭や堆肥に加工しています。農場経営では日々発生する鶏ふんを処理して出荷することがとても重要で、安定した出荷先確保は常に大きな課題となってきました。

鶏ふん堆肥を加えた開発中のBB肥料
乾燥機
くみあい肥料(株)佐々木勝部長(左)、(有)気仙環境保全 佐藤充取締役

肥料工場 くみあい肥料

BB肥料に鶏ふん堆肥活用

 現在、このブロイラーの鶏ふんの活用に取り組んでいるのが、BB肥料の製造を行うJAグループ企業であるくみあい肥料株式会社(岩手県花巻市)です。BB肥料とはバルクブレンディング肥料の略で、単味肥料(単肥)の粒をそのまま混ぜた肥料です。一般的な化成肥料は1粒の中に窒素、リン酸、カリなどが含まれるのに対し、BB肥料はリン酸アンモニウム(リン安)や塩化カリウムなどの単肥の粒をそのまま混ぜていることが特徴です。BB肥料は製造に燃料や水を使用しないので環境に優しく、配合割合を少しずつ変えてさまざまな製品を作り分けることができます。

BB肥料の概念図

 くみあい肥料はBB肥料を日本で初めて製造しました。現在、土壌の性質や作物の種類、お客さまの使い方などに応じて600種以上の製品を作っています。さらに使いやすい製品をお客さまに提案するため、BB肥料に粒状に加工された発酵鶏ふんを配合する検討を2年前から始めました。

 発酵鶏ふんは化成肥料と比べて水分が多いため、BB肥料に配合すると保管中に湿気で固まりやすくなります。固まりがあると肥料散布の時に支障が出る原因になります。そこで試行錯誤を繰り返し、発酵鶏ふんの乾燥を徹底して水分を下げた上で、全体に占める配合割合を調整することで問題を解決しました。

 また、発酵鶏ふんの粉が多かったり、粒が軟らかかったり大きさがばらばらだったりすると良い製品になりません。これは速度を落として硬めにペレット化することでクリアできました。さまざまな課題を乗り越え、現在、岩手県内で水稲や野菜を対象に広く栽培試験を行っています。試験は順調に進んでおり、来年の夏には野菜向け、再来年の春には水稲向けの本格供給が始まる予定です。

経済的で効果が高いBB肥料の活用を

 有機肥料の活用に業界の関心が高まっています。経済的で効果が高いBB肥料に、畜産由来の堆肥をプラスする取り組みに期待しましょう。

会社概要 くみあい肥料株式会社
所在地
〒025-0312 岩手県花巻市
二枚橋第5地割146番地
電話番号
代表:0198-26-3313

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