「冬場を迎えるにあたって」
子牛の寒さ対策について
2023.09
子牛は体重あたりの体表面積が大きく、脂肪が少ないことに加え、被毛による断熱効果が薄く、反すう胃での発酵熱が少ないことなどから、成牛に比べ寒さに弱い状態です。寒さが子牛のエネルギー要求量に与える影響と、影響を防ぐための寒さ対策を紹介します。 笠間乳肉牛研究所
ポイント
寒ければ寒いほど必要なエネルギー量が増え、増体に悪影響
対策
- 代用乳の給与量を増やすなどして、不足するエネルギーを補給
- カーフジャケットやヒーターに加え、湯たんぽの使用も効果的
- 換気しつつ、子牛に直接風が当たらないよう工夫を
寒さが子牛のエネルギー要求量に与える影響
子牛が最も快適な温度域は、被毛や皮下脂肪の厚さなどに影響を受けますが、3週齢までで15~25℃、3週齢以上で5~25℃とされています。この温度域を下回る(あるいは上回る)と、体温を維持するために余分にエネルギーを消費しなければならず、子牛のエネルギー要求量は増加していきます(表1)。
20℃の環境下と比較した場合、0℃の環境下では、3週齢未満で38%、3週齢以上で18%も余分にエネルギーを必要とすることになります。寒ければ寒いほど必要なエネルギー量が増え、増体に悪影響を及ぼします。しっかりと寒さ対策を行いながら、寒冷期には代用乳の給与量を増やす、油脂を多く含む高TDNの「ミルスター」を使用するといった工夫で、不足するエネルギーを補うことができます。
子牛の寒さ対策
カーフジャケット・ネックウォーマーの着用やヒーターの活用など、子牛の寒さ対策にはさまざまな方法がありますが、当室では湯たんぽを利用した保温対策も行っています(写真1)。
ポリタンクに60~70℃のお湯を入れ、写真のようにハッチ内に入れて子牛を保温します。生まれてから間もない子牛や、体調の優れない子牛などに使用します。1ハッチ内にポリタンクを四つまで置くことができますが、お湯の温度が高い間は、低温やけどをする可能性があるため、必ず子牛にカーフジャケットを着せ、少し隙間を空けてロープで倒れないように固定してください。
寒い外気から守るためには豊富な敷料も欠かせません。敷料の量(深さ)を考える指標の一つとして、「ネスティング・スコア(nesting score)」が提唱されています(Lago et al., 2006、表2)。わらなどを使用してしっかり「巣ごもり(nesting)」できるようにすると、子牛は外気から身を守ることができます(写真2)。床からの底冷えを防ぐためにも、冬場は敷料の量を増やして子牛を寒さから守りましょう。
寒さ対策を考える上では、子牛に当たる風の強さも重要です。子牛に直接風が当たらないようカーテンやコンパネで風よけを作り、壁からの隙間風が当たっていないかなどもチェックしましょう。一方で、完全に牛舎を閉め切ったままにしておくと、蓄積したアンモニアが気道粘膜にダメージを与え、呼吸器病の原因となります。冬場であっても一日の中で時間を決めてカーテンを開けるなど、定期的な換気が必要です。
出産直後から12時間後までの子牛に対する寒さ対策
冬季の間、当室では出生直後から約12時間までの子牛に対して、保温室を利用した寒さ対策も行っています。敷料はすのこ、ゴムマット、ビニールシートを重ねた上に敷き、上部には子牛がやけどしない程度の十分な高さにこたつを設置しています(写真3、4)。このことにより、子牛を外気から守り保温することができます。一方で、換気が不十分な場合は子牛が酸欠に陥ってしまうため非常に危険です。こたつの布団部分は完全には覆わず、必ず隙間を空けるなど換気には十分注意しましょう(写真4)。
代用乳給与時の温度管理も重要です。子牛に代用乳を与える際、季節を問わず母牛の体温(39~40℃)が最適温度とされます。しかし、冬季では代用乳を溶かし、子牛に給与するまでに、外気により代用乳の温度が低下します。そのため、冬季は最適温度を維持できるようやや高めの温度のお湯で溶かしましょう。一方で、お湯の温度が60℃を超えると代用乳中のタンパク質が変性し、消化不良の原因になるので、温度の上限にも注意が必要です。
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