これまで『ちくさんクラブ21』の紙面を通して、ET技術を中心に紹介させていただきましたが、「ET研究所のことをもっと知りたい!」というお声をたくさんいただいたので、今号はET研究所の主要事業をご紹介いたします。

全農ET研究所の成り立ち

 全農ET研究所は1987年、ET(Embryo Transfer=受精卵移植)技術を活用するため、飼料畜産中央研究所内に受精卵移植研究室を立ち上げ、研究開発をスタートさせました。1999年には本格的に受精卵製造を行うため、現在の上士幌町「ナイタイ高原牧場」内にETセンターを設立し、2012年に名称をET研究所に変更しました。

 また、地域の畜産農家、JA、県域JAと連携し、ET技術を活用して都府県の養牛生産基盤の維持拡大を支援するため、岩手県滝沢市に北日本分場、茨城県笠間市に東日本分場、福岡県福岡市に九州分場を、それぞれ配置しました。

『受精卵供給』事業

 全農ET研究所の事業の中でもっとも大切な事業は受精卵供給です。生産体制も年々強化し、情勢により変動しますが、2022年度は過去最高の約3万2000個の受精卵を全国に供給しました(図1)。

 月2回、凍結受精卵のリスト販売を行っているので、お近くのJA等に全農ET研究所の凍結受精卵リストについてお問い合わせください。なお、全農ET研究所のブログ内でも凍結受精卵リストを掲載しておりますので、こちらも併せてご覧ください。

繁殖技術の最新情報の紹介や凍結卵リストの発信も行っている

ET研ブログはこちらから

『農家採卵』事業

 日本国内の和牛生産基盤の維持拡大のため、生産者、JA等と全農ET研究所が連携して、受精卵の生産体制強化、生産者の所得向上につなげるのが『農家採卵』事業です。生産者が所有する和牛繁殖牛から受精卵を採取し、全農ET研究所が買い上げることで、生産者は受精卵の販売による所得を得ることができます。
 和牛受精卵の需要増加に伴い、農家採卵による製造個数が増え、参加するJAや生産者も増加傾向にあります(図2)。

新ETシステム

 全農ET研究所の職員が生産者の農場へ出向き、発情周期同期化から移植までを行う『新ETシステム』は、実施頭数が年々増加し、2022年度は8千頭を超えました。子牛販売を目的としたホルスタイン、血統更新を目的とした和牛、ごく稀に闘牛など、受卵牛は多岐にわたります(図3)。
 なお、前述の『農家採卵』と『新ETシステム』を組み合わせ、体内新鮮卵の「高受胎性」を最大限に生かす『シンクロET』も実施しており(図4)、季節を問わず安定した受胎率が得られています。

和牛精液の供給

 全農ET研究所では、ゲノミック評価により選抜した黒毛和種種雄牛を飼養し、精液を供給しています。枝肉6形質(※)を中心に、各形質に特徴を持つ種雄牛を選抜し、不受胎対策をはじめ、幅広く活用いただいています。パンフレットも作成しておりますので、ぜひご覧ください。

和牛精液のパンフレットはこちらから

※ 枝肉6形質とは、枝肉重量、ロース芯面積、バラ厚、皮下脂肪厚、歩留基準値、BMS-No.の形質のこと。

GENEX精液の販売

 都府県の酪農基盤対策の一環として全農ET研究所では、GENEX社の所有する、乳牛種雄牛の精液を都府県に供給しています。GENEX社種雄牛の特長は、中型で健康なこと、および長命性にあり、経済性を重視した能力であることから、経営の安定化への貢献が期待されます。

 こちらにつきましても、パンフレットをぜひご覧ください。

GENEX精液のパンフレットはこちらから

 このように、全農ET研究所ではさまざまなラインナップを取り揃えながら事業を展開しております。次号以降、各事業をさらに掘り下げてご紹介させていただきますので、引き続きご覧いただけると幸いです。

全農ET研究所の紹介動画

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