きてみて!うちの学校/神奈川県立中央農業高等学校

2024.04

神奈川県の地図

「地域から愛される学校」を目指す神奈川県立中央農業高等学校。
農福連携の活動や地域住民を対象にした酪農体験など、地域を巻き込んだ取り組みを活発に行う。都市部に近いからこそ、生徒は地域とのかかわりを大切にしている。
1月の「第7回和牛甲子園」の取組評価部門では、地域を視点にした取り組みが評価され、優秀賞に輝いた。
牛と地域と向き合う生徒の挑戦を追った。

やる気や根性が伸びやかに育つ校風

 中央農業高校は県内では唯一、農業科だけを設けている。同校の特色について、畜産科学科の小笠原直樹先生は「生徒は、農業を志している点で共通しています。そのため、学校全体に統一感がありますし、生徒が互いに高め合える環境も整っています。根性があり、ガッツのある生徒がたくさんいます」と話す。

 「動物が好きで、この学校への入学を決めました。実習も多いので、毎日が楽しいです」と笑顔で語ったのは、生徒の1人。夏休みなどの長期休暇にも、牛を世話するために牛舎に通うが、「牛が大好きなので、大変とは感じません」と続ける。

 同校には、生徒のやる気やガッツを受け止め、伸ばす風土もある。生徒の発案を最大限尊重し、採用する。例えば、牛が常食する粗飼料。近年の餌代の高騰を受け、年間を通して粗飼料を自給できないかと生徒が考えた。関東地方では珍しい「ローズグラス」は温暖な気候に適している牧草だが、温暖化を受けて同校でも栽培できるのではないかと挑戦した。現在はイタリアンライグラスやライ麦、エンバクなどを試験栽培しながら、通年で粗飼料を自給する方法を模索しているという。

  • 校名
    神奈川県立中央農業高等学校
  • 所在地
    神奈川県海老名市中新田4-12-1
  • 生徒数
    546名(2023年4月1日時点)
  • 創立
    明治39(1906)年3月
  • 学科
    園芸科学科、畜産科学科、農業総合科
  • 特徴
    創立から120年近く経つ、歴史と伝統ある農業高校。県立高校の中でも広い敷地を有し、水田や圃場、牛舎、豚舎など、農業に関連する施設を豊富にそろえる。畜産科学科では、家畜の生態や、飼養管理の方法、ヨーグルトやベーコンといった加工品の製造技術などを学ぶ。1、2年時に基礎を学び、3年時には自ら決めたテーマで研究する。
ボクがブラウンスイス

将来を見据え、先端技術を学ぶ

酪農体験などを通して地域との信頼関係を形成

 乳牛は現在、ホルスタイン種、ジャージー種、ブラウンスイス種がいる。同校では、飼養している牛を活用した体験イベント「酪農教育ファーム」を開催している。「地域の人に酪農を知ってもらいたい」という生徒の発案で始まったイベントだ。地域住民を学校の牛舎に招き、乳搾り体験などを提供している。「住宅街が近いと臭気クレームが寄せられてしまうのですが、『酪農教育ファーム』を開催するようになってから、クレームは無くなりました」(小笠原先生)

 また、牛舎には搾乳ロボットや餌寄せロボットなどが導入されており、先端技術や自動化された飼養管理を学ぶ。小笠原先生は「大規模酪農家に就農する生徒もいるため、最新の管理を学ばせたいと思い、導入を決めました」と話す。

 搾乳ロボットを操作していた生徒は「1年の頃は操作パネルに知らない表示が出て焦ったこともありましたが、今は使いこなせるようになりました」と感慨深げに話す。生徒の吸収力の高さに、小笠原先生も驚かされることがあるそう。

ロボットを操作する生徒
酪農教育ファーム乳搾り体験
ロボット
「ガッツのある生徒が多いです!」
小笠原直樹先生

飼育のこだわり

 ブラウンスイス種のオスは、肉量があまりとれないことから、ほとんど市場に出ることはない。しかし同校は、昨年11月に学校で生まれたオスを現在、肉牛として飼養している。この取り組みは、「ブラウンスイス種の肉牛を一般的にしたい」という生徒の発案によるもの。地域で出る廃棄食材などを与えながら、良質な肉牛に育てる計画が進行中だ。

モリモリ食べます
ブラウンスイス種のオス

希少種の育成に取り組む

複数の和種の中から“推し牛”を見つける住民も

 約8年前から和牛の肥育も始めた。現在、肉牛は黒毛和種と褐毛和種、無角和種、そして日本短角種の交雑牛がいる。小笠原先生は、「無角和種は、全国に200頭ほどしかいない貴重な肉牛。また、肉牛だけで4種類も飼養している農業高校は、全国的に見ても珍しいはず」と胸を張る。「神奈川県のような都市化が進んでいる県では、畜産と関わりをもたない人が大多数を占めます。地域の方々に畜産を知ってもらうべく、さまざまな和種をそろえました」と理由を話す。そうした地道な取り組みが実を結び、生徒だけでなく、近隣住民の中にも自分の“推し牛”を決める人がいるそう。

 さらに同校では、黒毛和種と褐毛和種、日本短角種を交雑した「三元牛」を飼養。純血種と比較しながら、「三元牛」の暑さや病気への抵抗力、適切な肥育期間などを調べている。生徒の一人は、「『三元牛』がどのように育ち、どのようなお肉になるのか全く想像がつきませんが、今後が楽しみです」と、期待を込めて語った。

牛と生徒の画像
牛の画像

セールスポイント

 「農福連携」に力を入れています。近くにある特別支援学校との共同学習も実施。昨年度は、両校の生徒がともに牛舎での作業や米作り、うつわ作りなどに取り組みました。「障がいのある方々と畜産現場で働くうえで必要なケアについて、知る機会となりました」と、小笠原先生。

牛の飼養管理について話を聞く
特別支援学校の生徒ら
一緒につくった平皿で牛肉を試食
3人の生徒の画像

(左から)

  • 阿部 太郎(あべ たろう)さん
    牛やロボットの扱いがさらに上手くなるよう、頑張ります
  • 土佐 道香(とさ みちか)さん
    酪農部の部長です。皆で力を合わせて健康な牛を育てます!
  • 石塚 実尋(いしづか みひろ)さん
    来年度の和牛甲子園も楽しみです。研究など頑張ります!

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