宮崎県立高鍋農業高等学校
きてみて!うちの学校/宮崎県立高鍋農業高等学校
2024.07
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地域をリードする農業経営者の育成を目指す宮崎県立高鍋農業高等学校。
実際の農場経営と同規模で質の高い畜産を学ぼうと、地元宮崎県はもとより県外からも学生たちが集う。
学年にとらわれず“ワンチーム”でB&Wショウや全共、和牛甲子園に向けて奮闘する生徒たちの取り組みを紹介する。
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実践的な環境で学ぶ
高鍋農業高等学校は、宮崎県で唯一、文部科学省から農業経営者育成高等学校の指定を受けている。生産に関わる園芸科学科、畜産科学科の2学科は寮で生活しながら農業経営者に求められる知識と技能を身につける。髙橋寛校長は「寮にいるからこそ、早朝の作業や夜間の分娩などを適時に行え、実際の農業経営に即した学びができます」と強調。今年から1年と3年が同室となるように寮生活の改革も行った。
肉用牛の指導にあたる佐藤登士夫先生は「生産農家にとって周りの方とのコミュニケーションはとても大切です。そうした力を寮生活の中で身につけてほしい」と話す。実際、農場でも3年生が後輩に教える姿が以前より見られるようになってきたという。寮生活を送る生徒は「後輩たちに見られているからしっかりしないと、と思い行動するようになりました」と笑顔で話した。
同校の卒業生の進路は生産者に留まらず、政治家や企業の経営者など多岐にわたる。毎年11月にさまざまな分野で活躍する卒業生を招き、講演を行う交歓会は生徒たちにも好評だ。髙橋校長は「地域で生徒を育て、育った生徒が地域を支え、次世代を育てる。こうした循環を大切にしたいです」と話した。
校名:宮崎県立高鍋農業高等学校
所在地:宮崎県児湯郡高鍋町大字上江1339-2
生徒数:229名(2024年4月時点)
創立:明治36(1903)年4月
学科:園芸科学科、畜産科学科、食品科学科、フードビジネス科
特徴
旧高鍋藩の舞鶴城跡に建つ同校は、今年で創立121年を迎えた。藩校「明倫堂」の教えを受け継ぐ歴史ある学校だ。創立以来、「研学修技」「勤労興産」「礼節敬愛」「感恩報謝」の校訓を基調とした教育を実践し、宮崎県の農業をけん引する人材の育成に取り組んでいる。
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牛のオブジェ
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髙橋寛校長
良い牛の育て方と見極めを学ぶ
5年に1度の大会見据え 日々、技術向上を目指す
実際の農業経営と同じ規模で畜産を学べるのが同校の特色だ。乳牛は搾乳牛13頭、育成牛16頭。ホルスタイン種を中心にジャージー種、ブラウンスイス種がそろう。
酪農を専攻する生徒たちの目標の一つが「オール九州B&Wショウ」での入賞だ。また、5年に一度開かれる第16回全日本ホルスタイン共進会(全共)の地区予選、第8回九州連合ホルスタイン共進会が11月に控えている。「全共での入賞を目指したい」と、大会に向けてリードマンの技術向上、ブラッシングや牛洗いなど、牛のコンディションを整えるのにも余念がない。6月には農業クラブの家畜審査競技会も開かれるため、良い牛の見分け方の学習にも力を入れている。酪農担当の佐藤健大先生は「経営者になった時、良い牛と悪い牛を見分けられないといけない。大会などを通して力をつけてほしい」と話す。
大きな目標を掲げる一方、「防疫・衛生管理は基本に忠実に、日々の飼養管理をきちんと行い、健康な牛を育てることが何より大切です」と佐藤先生は指導する。
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IT機器の活用
次世代の農業経営を見据え、IT機器の導入も積極的に行っています。その一つが重たい搾乳器を自動搬送する「キャリロボ」。個体識別とあわせて毎日の乳量を記録できます。その他、養牛カメラ、ファームノートカラー、牛温恵などの機器も導入して管理しています。今後は、蓄積したデータを活用して卒業論文などにも生かしたいですね。
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「友達と教え合いながら学べて楽しい!」
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「実家は繁殖農家だが、将来は一貫経営が目標!」
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「自分たちで育てた牛の肉はおいしかった♪」
自ら課題を見つけ、考え、行動する
牛や地域のために一丸で
「牛が餌を食べないと生徒たちは報告してきますが、『どうしたら食べてくれるのか』そこを考えるのが大切です」と話すのは肉用牛部門で指導する佐藤登士夫先生。生徒自身に課題を認識させ、解決方法を考えさせることが大事だという。飼料の食べ残しを計量し、その記録の分析から改善につながったこともあるそうだ。
今年1月の第7回和牛甲子園で優良賞に輝いた同校。すでに第8回大会に向けて研究を始めている。「生徒たちは、他校の育てた牛や取り組みを見て非常に刺激を受け、観察する力がつきました」と佐藤先生。大会に参加した生徒は「肉用牛経営研究班は学年に関係なく、専攻の皆で一緒に研究しています。全員の力で総合優勝を目指します」と力強く宣言した。
同校の取り組みに対し「エノキの菌床を提供してくれる企業から新たなアップサイクルの相談があったり、菌床を用いた敷料を肥育農家が取り入れたりするなど、地域からの期待も高い」と佐藤先生。地元企業や生産農家が抱える課題にどう取り組むのか、アイデアを出し合う姿に頼もしさを感じているという。
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肉用牛担当
佐藤登士夫先生
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研究のポイント
敷料ののこくずにエノキの乾燥菌床を加えた際のコスト削減や効果について研究しています。前回の効果測定は秋口だけだったので、年間を通してどのような変化があるのかを検証中です。また、課題として上がった戻し堆肥の有効活用方法についても探索しています。和牛甲子園での発表をご期待ください!
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「寮は1年生と相部屋。先輩として頑張るぞ!」
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「飼養管理の基礎をしっかり学べるのが魅力!」
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「実際に牛に触れて学べるので身になる!」
PDF: 1.27 MB