ET研便り
体外受精卵の生産技術と受胎率

2024.07

 全農ET研究所は1999年に北海道の上士幌町にあるナイタイ高原牧場に設立されました。以来、体内受精卵の生産を中心に事業を行ってきましたが、国内での受精卵移植の需要が増えたことから、この度体外受精卵の生産も開始しました。今号では、OPU-IVP(経膣採卵による体外受精卵生産)の技術と受胎率について紹介します。

OPU-IVPとは

 生体内卵子吸引(ovum pick up : OPU)は、専用の超音波プローブを使って卵巣から卵子を直接吸引する技術です(写真1、2)。この卵子を体外で精子と受精させ、受精卵を作る体外受精卵生産(in vitro production : IVP)と組み合わせたものがOPU-IVPです。近年、このOPU-IVPによる受精卵生産が、特に海外で急増しています。国際胚技術学会(IETS)の集計によると、2021年にはOPU-IVPで作られた受精卵の移植件数が110万件を超え、体内受精卵の移植件数(約30万件)を大きく上回りました。この背景として、牛のゲノミック評価の発達により、優れたゲノミック評価値を持つ若い牛から、早期に卵子を採取するニーズが高まったことが考えられます。
用語解説
※ゲノミック評価・・・牛が持っている遺伝的な能力の度合い「育種価」に各個体の遺伝子型データを加え、計算したもの

写真1 OPUの作業風景(前から)
写真2 OPUの作業風景(後ろから)

OPU-IVPのメリット

 OPU-IVPには、体内採卵やと場由来の卵巣を使用した体外受精の製造と比較して、以下のようなメリットがあります。

OPU-IVP受精卵の受胎率

新鮮受精卵・凍結ともに70%以上

 OPU-IVPで生産した受精卵について、ET研究所場内と系統農場において移植を行いました。いずれも未経産牛への移植ですが、新鮮受精卵・凍結ともに受胎率は70%を上回り、ET研究所のOPU-IVP受精卵の品質が十分に高いことが示されました (表1)。

ET研究所の体外受精卵品目

 ET研究所で販売する体外受精卵をご紹介します。

黒毛和種のOPU-IVP受精卵

 子牛の登記が可能な受精卵を体内受精卵よりも手頃な価格で販売しています。また、高育種価ドナーからの受精卵製造も行っています。

食肉処理場由来の卵巣を利用した黒毛和種体外受精卵

 複数の雌牛から得られた卵子をまとめて受精させるため、受精卵の個別の母牛は特定できませんが、さらに手頃な価格で提供しています。

F1体外受精卵(全農種雄牛✕食肉処理場由来ホルスタイン)

 全農種雄牛(黒毛和種)の精液をホルスタインに人工授精していただいているユーザー様向けに販売しています。

ご案内

 ET研究所は、体外受精に用いる培地や凍結液の改良、受精卵のゲノミック評価卵子のガラス化保存法など、さまざまな技術開発にも取り組んでいます。こちらの取り組みにつきましても、今後生産者の皆様にご紹介していきたいと思います。

全農種雄牛についてはこちら
全農ET研究所の紹介動画

連絡先

 受精卵の血統や価格についての詳細は、こちらにお問い合わせください。

電話:01564-2-5811
FAX:01564-2-5813
メール:zz_zk_etc_kamishihoro@zennoh.or.jp

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