海外レポート 大韓民国 Republic of Korea
アフリカ豚熱の発生状況 日本国内への侵入を防ぐためには

2024.10

①はじめに

 アフリカ豚熱はアフリカ大陸に起源を持ち、豚やイノシシの病気として知られ、発熱や全身性の出血性病変を特徴とする致死率の高い病気です。

 アフリカ大陸以外ではヨーロッパや中南米などで散発的に発生がありましたが、イタリアのサルジニア島以外では撲滅していました。しかし、2007年に東ヨーロッパのジョージアでの発生を機にヨーロッパ地域で拡大を続け、現在はイタリア、ドイツ、スウェーデンまで発生が広がっています。西ヨーロッパでのアフリカ豚熱発生は、①野生イノシシの感染個体数の増加②養豚場で発生――という順で拡大しています。ドイツ国内ではポーランドとの国境付近での発生だけではなく、オランダやフランスとの国境付近での発生も報告され、さらなる発生拡大が懸念されています。

 アジア地域では、ロシア国内での発生拡大を受け、18年に中国で、19年に韓国で発生しました。日本の近隣国での発生が継続しており、現時点ではアジア地域でアフリカ豚熱が報告されていない国は日本、台湾、スリランカに限られています。

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図1 アフリカ豚熱の発生拡大状況
出典:農水省

図2 韓国におけるアフリカ豚熱発生状況(24年8月30日時点)
地図
国旗

②韓国での発生状況

 韓国では、19年に北朝鮮国境に近い養豚場での発生以降、養豚場や野生イノシシでの検出が継続しています。24年に入り、半島中部に位置する慶尚北道の養豚場で延べ5事例の発生を確認しました(図2)。

 発生増加の要因は、野生イノシシの検出地域が南下し、当該地域でアフリカ豚熱に感染した野生イノシシの個体数が増えたことにあります。養豚場周辺に常にアフリカ豚熱ウイルスがいる状態となり、農場・豚舎内への侵入リスクが高まっているためと考えられます。

 また、半島南部の釜山でも24年2~4月に野生イノシシからアフリカ豚熱ウイルスが検出されました。日本への旅客船や飛行機が行き来する地域での発生のため、日本国内へのアフリカ豚熱侵入リスクが高まっています。

③旅客手荷物等のアフリカ豚熱ウイルス遺伝子検査

 海外から日本への旅行者数はコロナ禍前まで戻っています。特にアジア地域からの旅行者が多くなっています。

 動物検疫所における旅客手荷物と国際郵便物由来肉製品からのアフリカ豚熱ウイルス遺伝子検査では、24年1~7月は延べ89例が陽性となりました(表)。19年4月以降の延べ陽性件数199例のうち44.7%を占めました。いずれもアジア地域から国内に持ち込まれたものです。

表 豚肉などからのアフリカ豚熱ウイルス遺伝子検査陽性事例(2024年1~7月)

④日本国内への侵入防止対策

 さまざまな人や物を介して日本国内にアフリカ豚熱ウイルスが侵入するリスクは高まっています。

 農水省はウイルス侵入防止の取り組みとして海外旅行者への注意喚起を強化しています。空港等におけるアフリカ豚熱発生国からの日本国内への肉製品の持ち込み防止を目的とした検査の強化、空港での靴底の消毒、日本国内での農場施設への不要な立入禁止の要請等を実施しています。

 18年に国内で豚熱が発生した際、豚熱ウイルスが野生イノシシを介して養豚場に広がった点を踏まえ、登山者やキャンプ利用者に対して、肉製品を含む食品の廃棄禁止、使用した靴裏の汚れ落とし、消毒・洗浄ポイントの利用を推奨しています。

⑤豚舎への侵入を防ぐには

 養豚場で想定される豚舎へのアフリカ豚熱ウイルス侵入経路としては、豚熱ウイルスの侵入経路と同様、①イノシシ、その他野生動物を介した豚舎内へのウイルス持ち込み②人や衣類、機材等を介した豚舎内へのウイルス持ち込み③水を介した豚舎内へのウイルス持ち込み――があげられます。

 普段からの飼養衛生管理基準の遵守が、アフリカ豚熱と豚熱のウイルス侵入を防ぐ対策になりえます。農場外から病原体を「入れない、増やさない、持ち出さない」取り組みを継続してください。さらに、アフリカ豚熱ウイルス対策として海外肉製品の農場への持ち込み禁止、農場関係者以外の農場敷地への立入禁止、獣害フェンスによる野生動物侵入防止策の定期的な補改修等も実施しましょう。

豚舎への侵入を防ぐポイント

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