ET研便り
ET研究所種雄牛の紹介
2025.01
日本全国へ受精卵を供給している全農ET研究所ですが、黒毛和種の種雄牛がいることはご存知でしょうか。ET研究所の種雄牛は、乳牛への不受胎対策として安価で受胎性の高い精液を供給するため、育種価の高い和牛精液を自家生産することで高い成績が期待できる安価な和牛受精卵を供給しようと造成されました。現在ではET研究所独自のゲノミック評価を利用して、高能力の種雄牛を造成できるようになりました。近年、ET研究所種雄牛産子の肥育データ等が集まってきましたので、紹介します。
ET研究所種雄牛の特徴
ET研究所の種雄牛は、ET研究所が誇る北海道育種価の高い雌牛やゲノム育種価の高い雌牛を基幹雌として、体内採卵技術や近年ではOPU-IVF(経腟採卵-体外受精卵)技術を用いて効率的に造成してきました。それぞれの種雄牛は枝肉重量や脂肪交雑、総合評価値(枝肉重量:脂肪交雑:歩留基準値=1:2:1)等のゲノム育種価を基準に選抜しました。また、ストロー封入精子数が多いため、高受胎率が期待できます。
ET研究所ではブルブックも作成しています。それぞれの種雄牛の血統やゲノミック評価値、特徴などが載っていますので、ぜひご覧ください。
次に、ET研究所種雄牛についていくつかピックアップして紹介します。
種雄牛の紹介① 満天太郎(金太郎3-百合茂-安福久)
枝肉重量のゲノム育種価が高く、その他の項目もバランスが良かったため選抜された種雄牛です。また、後代検定の交配時の受胎率も非常に高いので(35/48,72.9%)、受胎しにくい牛への使用もお勧めです。産子が大きいため、経産牛への授精をお勧めします。「満天太郎」は佐賀県畜産試験場に預託されており、佐賀県内での使用割合が高いです。共励会でも実績を残しており、JAさが肥育部会女性部枝肉共励会で優秀賞1席、南港市場で行われた令和6年度JAからつ肉牛枝肉研究会では最優秀賞に輝きました。
「満天太郎」産子の枝肉共励会での受賞成績①
JAさが肥育部会女性部枝肉共励会
受賞
優秀賞1席
枝肉概要
- 血統:満天太郎-百合茂-安福久
- 性別:去勢
- 月齢: 29カ月齢
- 格付:A5
- BMS:No.12
- 枝肉重量:562kg
- ロース芯面積:105cm2
- バラの厚さ:9.2cm
「満天太郎」産子の枝肉共励会での受賞成績②
令和6年度JAからつ肉牛枝肉研究会(南港市場)
受賞
最優秀賞
枝肉概要
- 血統:満天太郎-安福久-百合茂
- 月齢:28カ月齢
- 性別:メス
- 格付:A5
- BMS:No.12
- 枝肉重量:486.8kg
- ロース芯面積:97cm2
- バラの厚さ:9.1cm
種雄牛の紹介② 百忠平(百合茂-勝忠平-第1花国)
気高系の血が濃く、「満天太郎」と同様に枝肉重量のゲノム育種価に優れています。産子のデータ収集量はまだ少ないものの、母体の血統を選ばず抜群の成績を残しています(表1)。また、横浜食肉市場第5回東北フェアにおいて交雑種の部で優秀賞も受賞しており、交雑種生産用の精液としても活用いただけます。
「百忠平」産子の枝肉共励会での受賞成績
2024/3/15横浜食肉市場第5回東北フェア交雑種の部
受賞
優秀賞
枝肉概要
- 血統:百忠平
- 性別:去勢(F1)
- 月齢: 28カ月齢
- 格付:A5
- BMS:No.8
- 枝肉重量:625kg
- ロース芯面積:70cm2
- バラの厚さ:8.6cm
- 皮下脂肪厚:2.2cm
- 歩留基準値:72.4
最後に
知名度はまだ高くありませんが、他にもET研究所には能力の高い種雄牛がたくさんいます。特に近年選抜されたゲノミックヤングサイアーは非常に優秀なゲノム育種価を持っていますので、お勧めです(例えば、「北福峰」や「北萬徳」)。「北福峰」は今年度、後代検定の素牛出荷が始まり評価が上々。「北萬徳」は現在種畜化されている種雄牛の中で最も高能力の種雄牛となります。後代検定の試験種付けが今年度行われています。これらの高能力種雄牛を基に、良好な枝肉成績が期待できる安価な和牛受精卵の安定供給を目指します。今後、産子の成績や枝肉情報などがさらに集まってきましたら、改めて紹介いたしますのでぜひご期待ください!
案内
ET研究所は、体内受精卵・体外受精卵生産および受精卵生産に関する技術開発に取り組んでいます。こちらの取り組みにつきましても、今後生産者の皆様に紹介していきたいと思います。
PDF: 524.73 KB